(佐久間・ギャグ・甘め・ペンギンネタ)














休日の過ごし方














ぐっもーんにん!


こんな目覚めのいい朝は久しぶりってぐらいいい目覚めだわ。


カーテンの隙間からこぼれるお日様も、窓際のサボテンも


電線でぴちぴちさえずりあってる小鳥たちも朝を祝福してるみたい。


そ、れ、に!なんと今日は1日オフ!わかる?オフなの。休みなの。


わふーい。これは小躍りだってしたくもなるわよ。だってだって。


ここのところずっとやれ学校だの、やれ部活だの、やれ試験だの。


中学生満喫してたんだもん。計算してみたら朝課外を8時から受けて


部活が終わる21時までってどんだけ私学校に居るんだってね。


そりゃあどんだけ学校愛してるんだよ、って叫びたくもなるわ。


と、に、か、く。


今日は久しぶりのオフ。休み。つまりは自由だー。


録画しためてたDVD見る?漫画の新刊読んでないなー。


お菓子とか作っちゃっても?きゃーもうどうするよ。




舞いあがる私をよそに携帯の着信音が無情にも鳴り響く。


ベッドの枕元に無造作に投げ捨てられていた携帯を操作する。


ディスプレイには幼馴染の名前が。


あらあらこんな早朝からどうしたのかしらねぇ。


モーニングコール?はい私きもーい。




「はよー。どしたのー?」


、大変だ」


「おぉおぉどうしたのこんな清々しい朝に」


「ペンギンが脱走した」


「………は?」




ハッピーな休日はペンギン捜索に早変わりしましたとさ。









 +









出来るだけラフな格好に着替えて待ち合わせの帝国学園の校門へ。


そこにはすでに到着していた佐久間と無事に合流する。


わー佐久間の私服とか貴重すぎる。咄嗟に写メに保存すると


なにやってるんだ、とひと睨みしてきたので「冗談冗談」とかいいつつ


バッチリ保護しておいてやった。どんなもんだい。


にしても、本当に新鮮だな。佐久間の私服。毎日顔は合わせているけれど


学校ではもちろん制服だし、その後の部活の時もジャージもしくは


ユニフォームだし。なんかちょっと……うん、新鮮だな。




学校内に私服で入っていく。なんだか忍び込んでいるみたいで変にわくわくした。


サッカー部特設施設に入って、フィールドの傍にあるベンチに腰を下ろす。


ベンチにはわらわらとペンギンたちが集まっていた。




「あれ、だいぶもう見つかってんじゃん」




緊張気味にこちらをじっとみつめるペンギンたちがいる。


なんだ可愛いな。いっちょ前に人見知りでもしてるのだろうか。


そーっと近づいてベンチに座ると一番人懐っこそうな一匹をひょいと抱き上げる。


おーすべすべしとるの。膝の上で抱きかかえられておとなしくしてるペンギン。




「あとペンペンだけが見つかってなくてな、困ってるんだ」


「……は?」


「?いや、だからあと1匹だけが」


「いやいやいやいや。……は、ペンペン?」



今、なんつった?思わず自分の聴力疑ったわ。


14という若さにして聴覚やらかしたのかと思ったわ。


佐久間は何事もなかったように平然と。




「名前だよ、名前」


「……名前、あんの?」


「そりゃああるよ。ペンタだろ、ペン子にペン太にペンタゴンにペンちゃんに……」


「待って待ってどこから突っ込めばいいかわかんない」


「ちなみにの膝の上にいんのがペン太」




あ、君男の子だったの。改めて向かい合わせてしっかりとそのお顔を拝見すると


大きなつぶらな瞳で見上げながらきゅーと鳴いた。え、なに可愛い。




「で、私たちはどこ探せばいいの?」


「何が」


「はったおすぞこら。ペンペン、だっけ?探すんじゃないの?」


「あぁ、ペンペンなら今鬼道と源田が探してるし時期に見つかるだろ」


「待て待て待て待て」




じゃあなんで私を呼んだんだ。来た意味ないじゃん。


つか佐久間は探さないわけ?お留守番なわけ?私も、なわけ?


ちゃんっっっっと説明してもらうからなこんちくしょう。


私の貴重な休日返上させといてそれかい!


高ぶる様々な感情を出来るだけ奥の方に押し込めて「アンタは?」と聞く。




「俺は前の試合の時に足痛めてしまって」


「え」


「まだ完全に完治したわけじゃないからプレーはできないけど」


「うん」


「探しに行くくらいはできるって言ったんだけどな」


「…うん」


「鬼道がさ……“お前には連絡係を頼む”ってさ」


「……」




佐久間を気遣って何匹かのペンギンが佐久間の元に寄り添っている。


膝の上がお気に入りになったらしいペン太もきゅーと落ち着かない声を上げた。


私はよしよし、と落ち着きのないペン太を抱きしめて


長く深いため息をついた。わざと。聞こえるように。




「しょうがないから、付き合ってあげる」


「!」


「勘違いしないでね。この子が可愛いさに免じてだから」


「ツンデレかよ」


「うっさい。あ、あと、シェイクくらいおごってよね」


「調子いいやつ」




からっとした笑顔で佐久間が笑った。


ときめいてしまう自分がいた。なんて。ホント調子いいのかもね。




「でも、ありがと」


「……うん」




でも。おかげで素敵な休日になりそうじゃない?














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