ティナ・召喚前・FF6連載終了後・ヒロイン紹介みたい。。














 しごと














「ティナ?」




は彼女がいつもいる部屋を覗き込んだ。


そして、疑問符と共に首をかしげる。


目的の人物が見当たらない。


扉の枠にもたれかかり腕を組んで思慮する。


あれ?


果たして今日は出かけるなんて言っていただろうか。


自分が“仕事”で出て行く前は確か何も言っていなかったはずだ。


少々“仕事”である龍との交渉に手間どり、


三日ほどこのマランダの孤児院を空ける羽目になったが、


その間に何かあったのだろうか。


ほう、と息を吐くと一気に疲れが溢れ出してくる。


三日間のうちに2体の龍を封印してきたのだ。


精神的な疲労は覚悟していたものの、辛かった。


魔封の魔法は相手にもよるがなかなかに疲労が激しいものだ。


相手よりも魔力が上回っていなければ何より話にならない。


相手を多少疲れさせ、そして一気に魔力を凝縮させて閉じ込める。


一気に2龍も封印したおかげで残りは一匹という余裕はできた、が。




(父さんもえらく大変な仕事を残してくれたものだよな…)




放棄するつもりはない。


父が最後の力で自分へと移してくれた能力なのだから、責任もある。


おかげで、魔石の消滅で消えた魔法の力も何故か自分だけはつかえている。


多用することはなく、仕事の時だけ使わせてもらっているが。


はぁ。


もう一度溜息。




このまま寝てしまおうか。


けれども。


ティナのことも気になっていた。


過保護癖はケフカとの決戦を終えた今も抜けないらしい。


全く。


自分に自嘲の笑みを浮かべる。




(ん…)




少しだけ考えてはやっぱり今は少し眠ることにした。


ティナには少し悪いと思ったのだが、じわじわと引き寄せてくる眠りの波に


理性が利かなかったのだ。


ポーチに入れていた小包を丁重に取り出す。


ティナにあげようと思っていたのに…


旅先で見つけたリボン。


きれいなピンク色をしていて、これを一目見たときにティナの顔が浮かんだのだった。




(目を覚まして、ティナが帰ってきてたら渡そう)




はそれをもう一度ポーチに入れた。


それから自分のベッドへと体を沈めた。


シーツを被る気力さえ起らずに枕と、そのそばに置かれているモーグリの人形を抱きしめる。


ふかふか。


ふかふか。


手のひらから水が流れ落ちるように自然に眠りに入っていった。


一度すべての感覚が消えて無重力の中にいるように軽くなる。


夢だ。


今日は何の夢だろう。


あぁ。


また。


兄さんの夢かな。


この頃しょっちゅうだからな。


今日も、見るだろうな。


嫌じゃない。


兄さんに会えるのはたとえ鏡の中でも、夢の中でも、嬉しい。


だけど。


それが兄さんの苦しんでいる夢だったら話は別問題。




しかし。


今回の夢は少し違うようだった。




―― どうか、私の声を聞いてください。




凛としているよく通る声。


優しさがあるのにハープを弾いたような胸に残る音だ。




―― 貴方に、頼みがあるのです。




初めて聞く音。


声。


は目の前の光をまとった女性に「貴女は?」と言葉をかけた。


女性は穏やかに微笑み、答える。




―― 私は、調和の神、コスモス


『神、様…?』




オウム返しのように重複した。


疑っているのではなく自分自身への納得のため。




現実味のない幻想世界での現実にいきなり目が覚めた。


気づけば自分は見知りのない場所で膝を立てて座っている。


真っ白な世界だった。


足もとに微量な水たまりが一面を覆っている。


背後には10人…だろうか。


人の気配を感じている。


はコスモスを見上げた。




―― 貴方もまた私の戦士として戦ってくれますか?




戦う。


その言葉を聞いての内心は揺れた。


戦いたくない。


争いは何も生まない。


争いは争いを呼ぶ。


また。


あの時みたいに。




大事な何かを失ってしまうんじゃないか?




―― 混沌を司る神、カオスは世界を乱し、支配する事を望んでいます




そんなの最悪じゃないか。


は黙っていた。


それでも、コスモスには伝わったようだった。




―― 私は、世界を守りたい――




体中の何かがざわめいた。


鳥肌が立つ。


強い意思だった。


何者にもくじける事のない願い。


思い。


は一度頷いてみせた。




「 秩序の聖人の名に置いて、微力ながら貴方の力となりましょう 」




も負けじと強い気持ちをこめて言うとコスモスの瞳は潤った。


そして「ありがとう」と呟いたのだった。




ごめん父さん。


仕事はもう少し長引きそうだよ。


その前にやらなきゃいけないことができたみたいだ。


大切な、役目。


大丈夫。


ちゃんと終わらしてみせるから。


両方とも。


まぁみててよ。




共に闘う仲間、10人に振り返った


口元に微笑を含ませた。













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