クラウド















 ぎゃく















「セシル、僕のにも入れて」




少し上機嫌な彼女。


セシルは「ほどほどにしときなよ?」などと諭すものの結局は彼女に甘い。


たっぷりと注がれたそれをはうっとりする様に見つめて微笑む。


その笑顔についつい頬が緩んでしまうのはセシルだけではなかった。




「ホンット好きだよなー。しかも結構強いし」


「そういうバッツも結構飲むじゃん」


「お?じゃあ飲みくらべっか?」


「遠慮しとく。後で怒られそうだ…」




ジタンに。


という言葉はあえて飲み込む。


大抵はこの席にジタンやティーダ、まれにフリオニールも加わって


共に酒を嗜むことはあるが今回参加できたのは


20歳以上である、バッツ、セシル、そしてクラウドの4人だけだった。


それぞれ世界で多少の異なりはあるが大概未成年(二十歳未満)は禁酒


という“法律”があるらしく、スコールなんかは誘ったってきやしない。


ジタンの世界はそれが緩く、しかも盗賊という職柄が手伝ってか


酒に対する抵抗や躊躇いはない(というか、好き)ものの、


今回ばかりはウォーリアに捕まってしまい、


しぶしぶと愚痴りながらも部屋に切り上げていった。




(ウォーリアの目を盗んでジタンなら抜け出しそうだな)




彼ならしかねない。


そう思うとふ、とうれしくなった。


赤みを宿す頬を緩める。


そしてクラウドとふと目が合う。


彼はぎこちない雰囲気で口元を緩めた。


セシルとバッツの話が盛り上がっているようなのでクラウドの元に非難することを思いつく。


ま、そんなのただの口実だけど。




「おかわりは?」


「…もらおうか」




果実酒のビンのふたを開けてクラウドのコップに注ぐ。


態と零れそうなほど注いでやるとクラウドは少し驚いた反応を見せた。


の口元が弧を描く。


まるで子供がいたずらを成功させたときのように悪戯っぽい笑み。


クラウドは拭いとめた唇をコップから離すと少しとがらせてからむっとして見せた。




「はは、ごめんって。そう膨れんなよ、可愛いな」


「…からかうな、この酔っ払い」


「あら残念。まだまだ飲めるけどなぁ…」


「…。呂律の回らない舌で何言ってるんだか…」


「何?なんならご覧に入れましょうか…?」


「いいな、それ。その時はアイツにも見せてやれよ」


「………」




いつもの様に余裕気だったのも前半のみだった。


途中からペースを狂わされてあっという間にクラウドに指導権が。


軽い敗北感に押し黙った


クラウドはそんな彼女を横目に微笑して「冗談だ」と零した。


彼女は口を一の字にしてむ、とする。




「…まさかクラウドが意地悪だとは思わなかった」


「…。一体どんな風に思われてるんだ?俺は」


「うーん。クラウドあんまし喋んないし、そもそもちゃんと話したことなかったんだけど…


 何かいつも無口だし何か避けられてる気がして……嫌われてんのかなぁって感じ?」


「……酷いいいようだな」




突き放すようなぶっきら棒な口調。


他者に対しての冷ややかな物言い。


そしてほんの少しの意地っ張り。




誤解を受ける不器用な性格だったせいだろうか。


そんな風なことを微塵にでも思ってしまった。


改めて口に出すとクラウドは少しだけ目を伏せてからグラスに口付けていた。


その横顔を見て、は素直に「傷ついた?」と聞いた。


クラウドは静かに微笑みながら「いや」と否定した。


ふぅん、と相槌を打ちながらもの視線は外れない。




「僕は君みたいなヤツ、嫌いじゃないけどな」




ポツリと呟いた言葉。


クラウドは驚いてを盗み見た。


生憎彼女は部屋にたった今入ってきたばかりのジタンの方を向いてしまっていたが、


クラウドは半分は拍子抜けしたように。


そしてもう半分は嬉々した表情をぎこちなく浮かべていた。




「付き合ってくれてありがと、クラウド。後さ、今度その武器見せてほしいな」


「別に構わない」


「はは、じゃあ楽しみにしてるな――おやすみ」


「あぁ」




グラスを適当に洗って片付けるとはバッツとセシルにも軽く声をかけていた。


そうしてから迎えに来たジタンと共に部屋へと戻っていく。


ほう、と息を吐くクラウド。


ほんのり染まった頬は果たしてお酒のせいか。


それとも…?














余談


クラウドはヒロインに対して抱いたのは


恋愛感情ではないです(期待させてすみません;;


素直に嬉しいと喜べないような意地っ張りを書きたいな、なんて感じで…


あはは…




今回かけなかった武器ネタは次回にでも(●`・ω・´●) inserted by FC2 system