フリオニール・前編














 ていこう














「あったまきた…」




フリオニールの反応に対しては不機嫌に言った。


それは勿論フリオニールに対して。


男だと思い込んでいたが実は女だったという事実を未だに飲み込めていないフリオニール。


彼女を見るたびに一瞬静止し、慌てて視線をそらす。


何か見てはいけないものを見るような態度。


しかもそれがこの世界に召喚されてだいぶ経った今も続くものだから


もともとの原因が彼女にあったとしても、怒りに触れるのはもっともなことだと言える。


寧ろ曖昧加減が大嫌いの彼女にしてみてはよく我慢できていた方だろう。


しかし今回の事件で、は完全にキレた。


その場にいたフリオニールを含め、バッツ、ジタン、ティーダ、スコール、セシルの


全員の視線を受けながらもの機嫌は収まらない。




「前に言ったよな?そういう風に困るくらいなら性別とか好きに思ってくれていいってさ…」


「あ、あぁ…」


「…。だからそういうのが――もういい!」




ジタン!


いきなり名前を呼ばれてジタンは緊張させる。


思わず尻尾が硬直した。


はフリニールから視線を外さずに彼に手を伸ばした。


え?


思わず漏らした言葉。


はかぶせるように言った。




「ダガー貸して!」


「――!」


「こいつ言ってもわかんない!」




一瞬殺人予告のようにも聞こえたその言葉。


ジタンは何か考えがあるのだろう、と思い二本ある分の片一方を手渡した。


そして、冒頭に至る。









 +









秩序の聖域には水溜りのような浅い水面が無限に広がっている。


透きとおる世界。


白を基調とした透明感あるこの空間は時折コスモスが姿を現すのだが


ほとんどが自己治癒のために消えているのでいない方が多い。


今回は幸いにもいない。


そしてもう一つの幸いは、


この場にウォーリアの姿がないことだろう。


訓練や稽古ならまだしも、仲間内での揉めあいという名義の喧嘩は


見つかればそれ相応のおしかりを受けることになる。


自身それを承知なのかどうかはわからないが、とにかくフリオニールを連れ出した。


少し離れたところ(巻き添えを食らわないところ)では、


バッツ、ジタン、ティーダ、スコール、セシルの五人が成り行きを見ている。




「いや、実はおれ。いつかこうなるとは思ってたんだけどさ…」


「俺も。…でもまさかが杖以外の武器を持つっていうのは…驚いたッス」


「昔は剣ばっか使ってた、っていうのはティナちゃんから聞いて知ってたんだけどな…」


(剣術も、出来たのか…意外だったな)


「…?どうしたんだい?ジタン」




ダガーを手渡した人物であるジタンはどこか渋ったような表情をしていた。


セシルは少し首をかしげて疑問に思う。




「いやさ、オニオンが言ってた話思い出してな。アイツ剣の方が得意らしいんだけどさ


 ずっと杖使ってるだろ?――実はそれって」




セシルを含め、その話を聞いていた全員が驚きをあらわにした。









 +









「手抜いたら、死ぬよ?」




淡いピンクに色づいたダガー。


その場にいた仲間たちの中では一番軽いと思われる武器だ。


本当なら。


ティナが使っているような細身の剣が女であるにとって


一番使いやすいものなのだが、あいにく本人オニオンとクラウドと共に出かけているので


今回ばかりは仕方がない。


順手持ち、逆手持ちと左手を馴染ませる


一番近くで見ていただけあってそれが一本であろうともすぐに慣れてきていた。


本気だ、ということを悟り、フリオニールも動揺する。




「お、おい!俺はと戦うなんて一言も――」


「いってないね。だって聞いてないもん。――さ、早く構えなよ」


「理由もなく戦えない!」


「理由?そんなもんムカつく、で十分だよ。――来ないなら先行くぜ?」




強引に話を進めていく。


無機になっているのか、怒りが収まらないのか、はたまた何か考えがあるのか……


はフリオニールの意志とは裏腹に意見を通す。


ダガーを一度薙ぎ払うと一気に地面を蹴った。


一気に踏み込んだので波紋は崩れ、弾いた水が宙を踊った。














(続きます)
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