フリオニール














 ぶき














短剣、長剣、杖、弓、槍、斧、盾、そして素手…。


8種類もの武器を扱うことができるフリオニール。


ウェポンスぺシャリスト。


ティーダに聞いた話だとそれぞれの武器は


彼がもといた世界の仲間達から譲り受けたものだと言う。


彼が戦うという事は彼と、彼の仲間達がともに戦う…


そういう事なのだろうか。


彼の武器を手入れする後姿を見て…なんとなく足を向けた。















 +









「いいな、フリオニールは…沢山の武器が扱えて」




武器の手入れを一人黙々としていたとき、


いつの間にか隣にしゃがんでその作業を見ていたらしい


が声を上げて、俺は声にならない叫び声をあげた。


脅かすなよ。


それでなくてもまだ慣れてないんだから…


フリオニールの心の問いは誰に届くわけでもなく消えることになった。


は自分の手の中にあるスピアに触れて


何か考えている様子だった。




だって、杖のほかにもソードやナイフだって使えるだろ?」


「…まぁ使えるっちゃ使えるけどスタイルがさ」


「ああ、は魔法での遠距離の方が得意だっけ」


「そうそう」




近距離だって、悪くはない。


そういいかけたが飲み込んだ。


以前一戦したとき、酷く思いつめたような表情を


していたのを思い出してこれは聞かないほうがいいだろう、


という考えに至ったのだ。


自分だってそうだが、仲間達は皆、


様々な思いを胸に秘めて戦っているのだから。


彼女とて、例外ではないだろう。




「そりゃあ魔法なら生まれてからずっと使えてるから自信あるんだけど…


 魔法だって万能じゃないからさ」


「そんなもんか?俺から見たら便利そうだけど…」


「全然!力の配分しなきゃだもん!


 …前もさぁジェクトと真剣勝負したときにトランスしたまま


 アルテマぶっ飛ばしちゃって。……あの後ティナと


 オニオンナイトがいなかったら危なかったかも……あはは」


「はは…」




にへら、と笑いながら話すから全然リアリティを感じない。


けれども内容は完全に本物だし、しかもかなり最近の事だ。


冷静に物事を展開させ、計画性の高い戦闘をする


“危なかった”というだけで、なんだか命がけのような緊張感が伝わってきた。




「これが…俺のスタイルだからな」




呟くように言う。


相槌も何もなかったものだから少し不安になった。


え?…と見上げたは少しじっとみてから


「そっか」と微笑んで見せた。




「ねぇ、フリオニール」


「ん?」


「のばら…もしよかったら見せて欲しいな」


「ああ…!」




手の平をすっと差し出すと一輪の花が出てきた。


真っ赤なバラだ。


大事なものを扱うように丁寧に受け取り、


はわぁ…と嬉しさをこみ上げる。


その表情を見ているとなんだか照れくさい。。


もしこの光景をジタンが見ていたならば嫉妬しそうなところだ。




…。




大丈夫、傍にはいないようだ。


ぐるりとあたりを見渡したフリオニールが冷静に思う。


何かあるたびにとばっちりを食らうのが俺。


なんだかそういった役回りみたいなものなのだろうか。


以前もティーダとの喧嘩になぜか巻き込まれて


(あの時は仲直りできたようだったけど)しまう事が多々あるので困る。




「ありがとう、フリオニール」




満足した様子のがのばらを手渡す。


それを受け取ろうとしたとき、背筋が凍るように寒気がした。


おそるおそる振り返るとそこには明らかに


今その瞬間を目撃してしまったジタンの姿が…




もフリオニールの視線を追ってジタンの存在に気がついたようで、


しかもすぐに状況を把握したようで(本当に助かる…)


ごめんね、と一言残してふてくされるようにして


この場を去ったジタンの後を追いかけた。




手渡されたのばらを手に、途方にくれるフリオニールであった。














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