セシル(ジタン落ち);















 みっけ















「セシル」




名前を呼ぶと彼は「え?」と可愛い反応を見せながらも振り返った。


ふわふわの長い銀髪が揺れる。


僕をみつけて優しく笑んだ。


胸が一瞬焦がれる。




「どうしたんだい?


「ううん、ちょっと怪我してるみたいだから、気になったの」


「え?怪我?」




怪我なんて日常茶飯事。


そのせいで怪我慣れしていく戦士たち。


ケアルを使えば自己治癒力が高まりすぐに傷は塞がる。


の魔力なら一瞬だ。


できることなら。


怪我なんか伴って欲しくはないが、そうも言ってられない。




「ほんとだ、全然気付かなかった。ありがとう」


「気にしないで。勝手にやってる事だから」


「……優しいね、君は」


「ば、そ、そんなことないよ!全然!!……あーもう、はい!終わったよ!」




じゃあね!


とはにかみながら去って行く彼女。


照れている様子がまた可愛いな。


セシルは照れた様子で部屋を出て事もあろうか


ジタンとバッツとティーダの三人と鉢合わせをし、


からかわれている彼女を視線だけで見送った。


その時ちょん、とティナがそばによってきた。




「どうかしたの?」


「え?…ううん。ちょっと僕が怪我をしてね。小さい切り傷だったんだけど…


 が治してくれたからもう平気だよ?」


「そう。あまり怪我しないでね」


「?うん、わかった、気をつけるよ」




うん。


ティナは一度頷いた。


何に対しての肯定かは分からない。


けれどもきっと彼女の中で何かが納得できたようだった。


今はそれだけでいいかな。


セシルは考え事に終止符を打った。




ティナが両手を口の元に添えて口ぱくをしてみせる。


みみかして、という意味合いを理解してセシルは少しかがんで耳を寄せた。


ティナがこっそりと耳打ちする。




のお兄さんね、セシルに似てるの)


(…え、僕に?)


(そう。雰囲気とかが少し、ね。……だから落ち着くんだと思うわ)




貴方と話しているとき、嬉しそうだもの。


ふふ、と微笑む。


似てる、といわれて別に嬉しいわけじゃない。


それどころか自分に誰かを重ねてみているのだから複雑の気持ちのほうが強い。


けれども、それが彼女とか関わるきっかけになるのならば話は別だ。


一定の距離を持ちたがる彼女。


よっぽど中のいい仲間の元にしか自分からはなしかける事はない。


にがて、のようだ。


人間関係という、そういうものが。


だから少し、嬉しい。




「教えてくれてありがとう、ティナ」


「ううん。……あ、今のこと、には内緒よ?」


「うん、わかったよ」




じゃあね、と手を振って見送る。


セシルの心も少しずつ溶かされていっている。









 +









「セシル!黙ってて!お願い!!」




部屋に駆け込み早口でそれだけ言うと


部屋の入口からは死角になる壁の反対側へと体を押し当てた。


し、っと必死な様子でセシルに釘を刺す。


何事かな?


なんてぼんやり考えているとしばらくしてジタンが扉を開けた。




「…あれ?ここに入ったって思ったんだけどなー


 なぁセシル、の奴来てねぇか?」


「え??」




ばれない様にこそっと隣で身を縮める彼女に視線を配る。


はダメ、絶対言うな。


といわんばかりに首を振って見せた。


彼らのこの調子から行くと鬼事でもしているのだろう。


はしゃぐ二人は酷く楽しそうだった。


セシルはにこり、としながら




「うーん、どうだろう…」




と彼に伝えての死角である部屋の外側にてを出して


ジタンだけにの場所を指を使って知らせた。


が様子のおかしいセシルに対して疑問に思うのと


ジタンがにやりと笑うのはほぼ同時だったといえよう。


悪戯を思いつくジタン。




「そっか、サンキューな!とりあえず違う所も探してみるぜ」


「役に立てなくてごめんね?」


「全然!」




じゃあな!


とジタンは扉を閉めてしまう。


足音が遠のいていく。


完全に聞こえなくなってはやっと緊張を解いた。




「助かったよ、セシル……捕まったら罰ゲームとかあってさぁ」


「罰ゲーム?」


「うぅ……(ジタンと一日デート…)」


「…あぁ、なるほど。行ってきたら?それとも嫌なのかい?」


「そ、そうじゃないけど……(恥ずかしいって言うか…照れるって言うか…)」




カ、と顔を赤らめる


相手があの強引なジタンなのだから無理もないだろう。


その癖して優しくてよく見てくれている。


愛されてる。


それは周りの目から見てもわかるものだった。


気まずくなったのか、はふい、と部屋を出た。


扉を閉めて「素直になれ、バカ…」と自分自身に言ってしょんぼりした。


ぼぉ、としていた彼女を背後から誰かが抱きしめた。




「わ…!」


「みーつけた!」


「…!嘘!だってさっき――」




ニヤニヤ。


ジタンが笑う。


そこでセシルの存在を思い出して赤面する。


あの野郎…。


小さな握りこぶしを作る。


まぁまぁ、とニヤニヤしながらジタンはなだめて彼女の手に自分の指を絡めた。


彼女は面白いくらいに反応するものだからにやけが止まらない。


照れつつもむ、とさせたはジタンの頬を少しだけつねった。




「どこ行きたい?俺はとなら何処でもいいぜー?(ハート)」


「………。じゃ、じゃあ、ショップから…」


「OK♪」




手、離してよ。


やーだ。


という掛け合いを続ける二人。


ほほえましい光景。


思わず笑みがこぼれる。




「何かあったのか、セシル…」


「ん?」


「いや……少し、楽しそうだ」




クラウドが言う。


セシルはんーと曖昧に語尾を濁した。


クラウドは小首を傾げて疑問を示した。




「楽しみ…見つけたかな」


「??」














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