ティナ(ジタン落ち)・何気に続く。















 びねつ















―― ねぇ


―― なんだか疲れちゃったな…


―― もう、休んでもいいのかな…?




夢の中で兄さんは言った。


いつの日か忘れた。


けれどもほんの少し前の出来事。


彼は自分に背を向けたまま続けた。




―― 僕思うんだ。


―― 同じ双子なのにどうして君ばかり苦をするのだろう。


―― 兄として、何が出来ているのだろう。




顔が見えない。


みたい。


そう思っているのに自分はその場所に立ったままだ。


体が完全にその場所にいたがっている。


変な、夢。


こんなの嫌だな。


自分が動けない夢なんて。


見てるだけなんて。




早くさめればいいのに。




―― この世界が僕たちを望んでないんだ。


―― だから魔法の力は滅びた。


―― 僕たちも、消えてしまうかもしれない。




暗転。


暗くなる視界。


兄の影が震えているようだった。


頭を抱えて苦悩している。


自分の体が、急に重くなった。


重力に逆らうのが困難になる。


声を押し殺しつつもはあがいた。


兄はかまうことなく話を続ける。




―― 君を苦しめていたもの。


―― この、闇の力なんだね。


―― これさえ、これさえなくなれば君は――




生きられる。


呟いてないはずの声が聞こえる。


その続きの言葉も鮮明によみがえる。


鉛のように思い体内を駆けずりまわる闇の力。


自分にとっては毒物。


光がうせてしまう力。


出来事。


思い出した。


否。


忘れてたわけじゃないんだ。


ちゃんと、刻まれてたよ。


なのに。


どうして。


そんなに思い出させようとするの?


深く刻みつけようとするの?




怨んでる、の?









 +









ソファに座り込む。


隣に座るティナの肩に頭をあずける。


前髪で表情が隠されている。


けれどそんな事をしなくたって分かるくらいの表情は曇っていた。


ティナが目を伏せながら頭をなでている。


すぐそばではオニオンが心配そうにみていた。




「熱、あるんでしょ?寝てたほうがいいんじゃないの?」


「…。私もそういったんだけど、起きていたいって」




眠ってしまうとまたあの夢を見そうで。


コワイ カラ


撫でている手のひらから彼女の熱が伝わってくる。


なかなか下がらない。




「ったく。こんな時に限ってジタンの奴遅いよね!」


「…。すぐ、戻ってくるわよ、きっと」


「………」




大丈夫よ。


ジタンは貴方を拒んだりしないわ。


ティナがそういうとは小さく頷いた。


そしてティナのマントをぎゅ、と握り締めた。














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