・注)パロディ
・学園もの










[ジタン]















 おまたせ















笑顔を振りまきながらガラリと扉を開けると


中のへ屋にいた人物は俺の顔を見てあからさまに面倒くさそうな顔をした。


またか、という彼女の声が聞こえてきそうだ。


否、実際ちゃんと呟いている。


呟くという音量ではあるが確実に俺にも聞こえるように言っている。


……ようは嫌味だな。


俺はそんな事お構いなしににへらと笑って


とりあえず「失礼しまーす」と部屋にはいっていった。




「……で?」


「で、ってそんな……俺が会いに来てくれて先生嬉しいくせに」


「あぁ残念。生憎ながら嬉しくないの。意味もなく保健室くんなって言ってんだろ」




額をつつかれる。


痛いといえば痛い。


けれどもそれは彼女なりに遠慮された力加減。


ため息をつく


ゆったりと時間が流れている。


和やかな空間。


空気。


保健室の独特なにおいが鼻を掠める。


消毒液のにおい。


そんな堅苦しい空間を和ませるという役割をしているのは


中央のテーブルに置かれている一輪の花。




(あ、あの花……)




その花は以前俺がに、と差し出したもの。


買ったものだと遠慮ぶって受け取らないという事を見越していたので


学校の裏に咲いていたものを(一番色鮮やかで綺麗なもの)摘んで


彼女に「先生のために摘んで来たんだぜー」などと軽口を叩きながら差し出した花。


生憎もそこで呼び鈴が鳴ったものだから彼女の反応を見ることはかなわなかったが


彼女は律儀にもその一輪を大切に活けていてくれた。


俺がしばらく花のほうを見ていたものだからは視線に気がつき


ぶっきら棒に反らした。


あぁ、可愛いなぁなんて。


思ったとおり素直に呟いたら動揺しながらも




「先生をからかうな」




なんていう。


やっぱり可愛い。


ひそかな恋心。


生徒が、先生に抱いたもの。


先生のほうは、きっと気がついてる。




「なぁ、先生」


「何だよ」


「先生は彼氏作んねぇの?」


「……その発言はいないことを前提でってことだよな」


「だってそうだろ?」


「……そうですけどね」




追い詰めると彼女はすぐに観念した。


それから少し難しそうに「僕はいいの」という。


目を伏せて言う彼女の横顔を盗み見てジタンはふと気がついた。




「もしかしてカタオモイチュウ?」


「……ま、そんな感じ」


「なんなら相談乗るぜ?」


「いや、いいかな。その気持ちは嬉しいけど……。とりあえず今は満足してるし……」


「自分からうごかねぇと気付いてもらえねーぜ?」


「……いや、それも含めて現状維持、かな」




頑なに進展を拒む


俺はその時複雑だった。


その相手が、自分だったらいいのに。


そんな僅かな期待をしてしまう高校3年、18歳の夏。


もうすぐ卒業。


この学校ともお別れ。


そんな時。


卒業してしまえば彼女との接点も当然なくなる。


そうすれば。


彼女は自分の事なんて何百人見てきたうちの一人の生徒。


という風にアルバムにしまうのだろうか。


特別になりたい。


彼女の特別になりたい。


願うけれども所詮生徒と先生。


距離は意外にも深い。


考えつめていた俺の額を軽く突いては意味ありげに笑った。




「後半年くらい、待てるかなって」


「!……それって!」


「さてと」




今まで必死に書き記していた書類を軽く纏めて持ち上げる。


そしてファイルに閉じて棚を整理していく。


流石A型。


中々に几帳面だ。




しかし今の俺はそんな事構ってられないほどドキドキしていた。


だって、


そんなの、


反則だろ〜




項垂れている俺を横目にはクスリと微笑んだ。


あぁ、ヤバい。


可愛すぎる。


頭がくらくらする。


後半年。


彼女は相当意地悪だ。


中々性質が悪い性格をしている。


でも好き。




(惚れちまったもんはしょうがねーか…)




先生。俺やっぱ病気です。恋の病です。


なんて何時もの軽口をこぼす。


は含んだ笑みを見せた。




「ってことで、このまま保健室に……」


「何バカいってんの。次も授業だろ?」


「だって次国語……」


「どうせ寝るんだったら変わんないだろ」


「…………」














以下配役
 → 保健の先生
・バッツ → 地理
・クラウド → 生物
・WOL → 国語(学年主任)
・セシル → 数学
・シャントット → 教頭
・コスモス → 校長

・10代s → 学生(同学年) inserted by FC2 system