オニオン















 ふかく















「ティナ…」




ほかほかと湯気が立ち上るマグカップ。


の大好きな白色。


そしてその中に注がれている飲み物はの大好物ときた。


はご機嫌な様子で口元に笑みを浮かべて


早く冷めるようにふぅふぅ、と吐息をかけている。


お迎えではティナがほほえましく見ていた。


そして、冒頭に至る。




「はい、




ティナはとくにためらう事もせずにの言葉の先のものを察して


目的の小瓶を彼女に手渡した。


其れが望みのものだったようで彼女は「ありがと」と零しながら小瓶を受け取った。


カチャ。


と金具の留め金をはずしてふたをあける。


スプーンを取り出しお砂糖を掬う。


そしてそれをさらさらとマグカップの中に振りまいた。


一杯。


二杯。


三杯。


四杯……


段々とオニオンナイトの顔が曇っていく。




「待って、!其れ入れすぎだよ!絶対甘いって!」


「え、大丈夫だよオニオン。ココアは甘くなくっちゃ!」


「それココアだったの!?ココアはもともと甘いんだからお砂糖そんなに入れないんだよ!?」


「これに蜂蜜入れるともっといい」


「甘ッ!!…あぁもう!ティナも何か言ってあげてよ!」


「大丈夫よオニオン…。  時期に慣れるわ  」


「……………」




にっこりと微笑むティナ。


…た、確かに動じてない。


それどころかなんでも受け入れられるABOUT姿勢なティナがそこにはいた。


ふふ、と微笑みティナは再びマグカップに口を近づける。


ティナが飲んでいるのは少し甘め(砂糖2杯程度)のコーヒー。


ミルクをたっぷり注いでいるのでちょうどよく冷めている。




オニオンはしかめっ面をして硬直する。


其れ絶対甘いって。


絶対糖分取りすぎだよ…


というよりなんで普通に飲めるの??


などと無言のまなざしで彼女がココアを飲むのを見ていた。


はんーと少し唸ってオニオンにマグカップを差し出す。




「一口のんでみる?」


「…うっ…」


「いや、強制はしないけどさ。そんなに気になるならーって」


「………………………飲む」




長い沈黙は勇気の称号(いや、違うから Byオニオン)。


オニオンは自分と戦った末におずおずと其れを両手で受け取った。


じっくりと中の液体を眺める。


口が思わず一の字になった。


オニオンは躊躇いながらも一口控えめに啜った。


マグカップから口を離したオニオンは相変わらずのしかめっ面でココアを凝視している。




「はい、感想は?」


「………甘い、ね、すっごく………なんだか…ココアがどこかわかんなかったし…


 ……………それになんか、口の中でジャリって…」


「あぁ。そのジョリが癖になるんだなこれが」


「………………いや、僕もういい。…………あ、でももう一口…」


「どうぞ」




オニオンはもう一口啜った。


今度は先程より飲んだ量が少し多かった。


不覚も不覚。


一瞬とはいえ美味しいと思ってしまうなんて。


オニオンはダンマリしたままにマグカップを返した。


は其れを受け取るとこくりと飲んでテーブルに置く。


オニオンは複雑そうだった。




「…でもやっぱり砂糖減らしたほうがいいんじゃない?糖分の取りすぎはよくないし…


 ほら、体調管理も戦士の仕事だよ!」


「ん……そうだねぇ」




は思慮する素振りを見せた。


マグカップの口を軽く指でなぞっている。


そこでオニオンははっとなった。


不覚も不覚。


これじゃあ間接キスじゃないか!


ほう、と頬に赤みが帯びたのはココアのせいではないだろう。


はそんな彼をお構いなしに。




「ここ、使ってるし」




こめかみを指差しながら含んだ笑みを零した。














(不覚も不覚)(僕、振り回されてばっかりじゃないか……)



… 余談 …


ココアに砂糖と蜂蜜入れて驚かれたのは
紛れも無く深です。はい。

ホットミルクとか紅茶にも蜂蜜は入れたがります inserted by FC2 system