[ジタン]“迷”シリーズ第五弾・DISSIDIA FINAL FANTASY(2009.7.22)
















 迷















空中を彷徨いながらいくつか先のことを想定する。


どちらかと言えば頭脳派であるにとって


相手との交戦中であっても暇さえあれば作戦を練ることができる。


それは長い間戦場にかかわってきた彼女の特技のようなものだった。


相手に弾かれまずは着地場所の見当を立てる。


相手との距離を計算しつつ次の手を2.3つほど考えるのだ。




利き手の左手で杖の存在を確かめる。


相手を見据えながらも右手を伸ばし手のひらに魔力を集中する。


放出するためではなく確認。


の指先…親指、人差し指、中指の三つが輝いた。




(アルテマ換算後三発か……余裕かな)




気を抜く気はないけど。


壁にぶつかる寸前でくるりと旋回し、着地する。


重力に従うがままに墜落しないうちに壁を蹴って安定した場所へと降りた。


とん、とん、とん。


よろいで身をまとっていない彼女のからだは軽い。


その分防御は下がってしまうが彼女には敵を近づけさせない魔法の力があった。


それに。




「ジタン!」


「おうよ!」




共に戦う仲間もいる。


ジタンは威勢のいい返事をすると両手のダガーで


今二人が対峙しているモンスターに切りかかる。


殆どダメージはない。


それはこのモンスターが打撃に強いタイプだから。


しかし、魔法には、どうだろう。




「天の嘆きよ!」




… メテオ …




砕けた無数の岩が敵の頭上に降り注ぐ。


魔法呪文の詠唱の声を聞いてジタンはすばやく非難しているから


巻き添えなんていうヘマはしない。


今まで意識していたジタンが急に退き、気付けば頭上からの落石。


不意打ちも作戦のうち。


見事に二人は勝利した。


疲れを知らないジタンが満面の笑みで近寄ってくる。


もつられるように微笑んだ。




「楽ッ勝だぜ!」


「はは、ナイスアシスト。……やっぱジタンとはやりやすいな、色々」


「色々ってなんだよー!色々って!」


「褒めてんだよ……っと、怪我してるじゃん」


「へ?」




そこ座って、と指で示す。


崩れた瓦礫のような場所だが人一人座る程度何の問題もないだろう。


ジタンは素直にちょんと座り、はそのそばに膝をついた。


本来なら少しだけ見上げなければいけない彼女が今は低い位置にいて


すこしドキドキするジタン。


そんな事を気にもせず(多分気付いてねーんだろうな…)


の瞳は伏せられたままだった。


ジタンの手をとって腕の傷口に自分の手のひらをくっつける。


ケアル特有の緑色の光は意外にも暖かくて優しいものだった。


双方の沈黙。


意識してしまうことに気がついて慌ててジタンは話を続けた。




「ティナ…とかのほうがさ、やりやすかったんじゃねぇの?


 ほら、元の世界でも一緒だし、なんだかんだで仲よさそうだし」


「…、まぁ確かに付き合いは長いし、お互いよく知ってるから遠慮とかもないから……


 やりやすいっていえばやりやすいけど?」


「……はぁ、そうだよなー」




盛大にため息をついたジタンには小首をかしげる。




「ジタン相手でも、別に遠慮してるつもりないけどね。他の人だとわかんないけど」


「…、それってどうゆう……」


「はい、終わり。出来るだけでいいけど怪我すんなよ?


 これくらいならすぐ治せるけど痛いっていやー痛いだろ?」




さらりと流す。


きっと無意識。


気付いていない。


ジタンはなかなか手強いな…なんて脳裏の隅で考える。


そのときジタンは、はっとなった。




「お前も怪我してんじゃん…!」


「え?あぁ、小石が弾いたんだろ?これくらいだったらケアル使わなくても…」


「…ん、ちょっと貸してみ?」


「??」




人差し指の紙で切った程度の切り傷。


そんな小さな傷(本人でさえ気付かない程度の)にジタンは気がついた。


何をするのかと思えばジタンはふっと企むように笑んで


の指先を口に含んだのだ。


思っても見なかったことにの指先は少し緊張する。




「……。唾付けときゃあ治るって奴?」


「……。お前さーそこはソフトにおまじないのキス程度にとどめろよな?」


「(キ、ス…)……、それ、ティナにやったらオニオンに旋風斬してもらうから」


「何でたまねぎ小僧…」


「アルテマがいい?」


「いや、遠慮しときます」




さ、いくかー。


片腕を伸ばして進み始めるジタン。


ぶわり、と感じた違和感に遠くのほうを見た。


そんな彼女にジタンは置いてくぜーと声をかける。




「エスコートしましょうか?レディ」


「冗談。お断り」




彼の隣を通り過ぎながらは微笑んだ。




(胸騒ぎがするな……この先、気をつけないと…)




ジタンに表情を見られないところでふと、真顔に戻った。














(ケフカ――)
拍手ありがとうございます。


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