[ジタン]“迷”シリーズ第六弾・DISSIDIA FINAL FANTASY(2009.6.28)
















 迷 前















敵のトラップに嵌りバッツのみが異空間へと飛ばされてしまった。


それからはしばらくの道のりをジタンとの二人で進んでいる。


時折来る眩暈や胸騒ぎに耐えながらもは


ジタンの後ろを逸れないようについていた。


モンスターの気配が遠のいていく。


それだけが気がかりだった。




「顔色、あんまよくねーみたいだけど…。大丈夫かい?」




振り返って心配そうに言うからは慌てて微笑みを返す。


苦笑にも似たそれにジタンの眉根にしわが寄った。




「平気。考え事してただけ」


「バッツの事?」


「そう。遠くのほうだけど、一応魔力は感じるし、無事って事は分かるんだけどさ


 同じ方向にカオスに似た力も漂ってるから……不安で」


「………」


「え、僕へんな事言ったかな?」




こめかみに手を当てて目を閉じるようにして察知する。


確かな説得力のある発言にジタンは目を瞬かせたのだ。


半分幻獣の血が流れているにとっては造作もないこと。


それを当たり前のようにしてみてくれる彼女がジタンにとっては不思議だった。


ジタンは次第にきらきらと輝かせた目をへと向けたのだ。




「すげーじゃん!それ!初めてだったからちょっと驚いたけど…でも、すごいぜ!」


「!……気味悪くないの?」


「全然!……そんな事気にしてんのかよ。何時ものお前らしくないじゃん」


「何時もの、僕??」


「そ!いつものお前なら“それが何?”ってな具合に堂々としてると思うけどな」




堂々と。


自分を通す。


深いところにしっかりした者を持っている彼女。


だからこそ頑固だし、素直だ。


それが彼女のいい所だという事を、彼は理解している。


本職は盗賊というだけあって見つけることは得意らしい。


は少し目を細めて微笑んだ。


それから彼にありがとう、と呟いた。


凛として言うものだからジタンは顔を赤らめながら手をひらつかせた。




「べ、別にいいよ礼なんて…。あーもうっ!なんか調子狂うなー!!」




頭をかいてあからさまに視線をそらすジタン。


髪色と同じ尻尾がふにゃふにゃと揺れて可愛いな、なんて思った。


ゆっくりと流れる時間。


この平和さがすごく好き。


心地いい温度なの。


ああ。


でもね。


そういうのって。




長くは続かない――




ぴく、と脳裏に映像が流れる。


そんな感覚。


カオスの力の気配だ。


その力があまりにも自分を恐怖させるものだったから


反応に少し時間がかかってしまった。


相手からの攻撃にいち早く反応したのはジタンのほうだった。




「く、!」


「…!!」




のお腹に抱きつくようにして跳ね上がる。


地をけり再び地に着いたところはその場所よりも10メートルほど離れていた。


二人が今までいた場所には大きな穴が開いている。


ジタンに降ろしてもらいながら見覚えのある顔を見つめて


は酷く表情をゆがめた。


そして、悟るのだ。




――ケフカ、




「おやおや?こんな時間から仲のいい事仲のいい事。


 今度はそのサルですか、。ヒッヒッヒッ…」


「………」




腰を抱いていた手を緩める。


抱きかあけていた体制から元に戻すとケフカを一心に睨み


他の何者にさえも目をくれないような彼女が立っていた。


憎悪、哀愁、怒気、恐怖…


さまざまな感情が入り混じる表情。


ジタンは意識的に察した様子で庇うようにの前でダガーを構えた。


ケフカの笑みは深くなるばかり。




「懲りない人ですねぇ、。あれだけ教えたのに、足りなかったようですねぇ」


「――さっきから何を言ってる!!」


「五月蝿いサルは黙っていろ!!」




ぱちんと弾かれる。


ケフカの放った魔力だった。


後方へと飛ばされたジタン。


はケフカを見つめた。


今度は睨んでいるのではない。


ただただ慈悲深い瞳で見つめているのだ。


気に入らない、とケフカは吐き捨てた。




「父さんも、母さんも、兄さんも、皆……あんたの言うとおり守れなかったさ。


 僕が弱かった。だから大切なもの全部、見殺しにした……」


(何を言ってるんだ??)


「認めましたね。貴方は、ようやく認めましたよ!この人殺しィ!!


 貴方にはこちら側……カオスの力となるのがもっともふさわしいのですよ!


 人殺しの貴方が幸せになる……いや、幸せを望む事すらつみなのですから!!


 さぁぼくちんの手をとりなさい!さぁ!さぁ!さぁ!!」


「でも」




ジタンが行くな!と叫んだ。


腹部を押さえて必死に起き上がる。


傷口が開いて、痛いだろうに。


後で治癒してあげなくちゃね。


意外にもの心は穏やかだった。


ジタンにそっと微笑をこぼす。


大丈夫だよ。


ちゃんと、勝つから。


心配しないで。




「信じてくれて、ありがとう」




すぐ戻ってくるから。


すぐ終わらせるから。


君を心配させないように。


僕、頑張るからさ。




「僕はカオスになんか力を貸さない…貸すものか!」




だから、


お願い、ジタン。




「僕は確かに弱かった。けど、今は違う。


 大切な人がいる。


 助けてくれる仲間がいる。


 必要としてくる人がいる。


 守りたい、未来がある」




帰ってきたとき。


ぎゅってさ、


抱きしめて欲しいな。


お帰りっていって、笑って?









「守るためなら……僕が相手をしてやる!!」





























僕も「ただいま」って、いって、笑うからさ。


































(続きますぜー)
拍手ありがとうございます。


感想・脱字・変換ミス…一言コメント、大好物です!!(゚ロ゚屮)屮
inserted by FC2 system