[ジタン]“迷”シリーズ第七弾・DISSIDIA FINAL FANTASY(2009.7.23)
















 迷 後















「僕が相手をしてやる!!」




とん、と胸に手を当てて瞑想をする。


次第に底のほうから眠っていた魔力が引き出され


その魔力は主の姿を本来の姿へと変えた。


トランス。


が両腕を天へと伸ばしたかと思うと光が舞い白い翼が背を覆っていた。


長い波打つ桜色の髪。


額から後方へと延びる二本のひらのような触覚。


紅い瞳。


ほんのり灯る肌。


穢れを知らない翼。


天使。


それが幻獣と化したの姿だ。


ジタンは言葉さえも失いその姿に魅入る。


その光に触れているだけでどんどん傷が治癒されていく。


穏やかになっていく。


のたくさんの想い。


のたくさんの願い。


優しさ。


暖かいそれにジタンはゆっくりと目を閉じてただそのぬくもりだけを感じていた。




「信じるから!」




見開いた水色の瞳を見せてに言う。


それからぐっと拳を突き出してジタンはいつものように押し出した。




「絶対負けんなよな!!」




はふわりと笑むだけで返した。







天使の微笑み。


脳裏に焼きつく。


胸を焦がすもの。







あぁ。


そっか、俺。


ようやく気がついたかも。









は光を放ちケフカを飲み込んだ。


そして自らも姿を消す。


二人だけが違う次元へと移動したのだろう。




俺にとって


って……




ジタンが全回復した状態でその地に立ったとき、


その場所にはジタン一人の姿しかなかった。


ジタンはがバッツの魔力を感じるといっていた場所。


まずは自分の出来る事のためにも足を進め始めた。


その表情は頼もしい。


そしてポツリと呟いた。




「俺も、男あげるか……なんてな」




帰ってきた彼女に、なんて言おうか。


ジタンはそれだけを考えていた。









 +









スコールと合流し、クリスタルの光に導かれるままにバッツとも合流する。


途中難はあったものの自分の追い求めていたクリスタルを


手に入れることができ、ジタンが思い残すものはただひとつとなっていた。




「おっせーな。……」


「道草食ってるんだよ、きっと。の奴があんな道化に負けるわけないもん!」


「そうね……それに、も帰る場所を見つけたみたいだし」




上からバッツ、オニオン、そしてティナ。


ティナが何かを含ませたような言葉遣いで言う。


ジタンに向けてだという事に気がついて彼は少し複雑そうに頭をかいた。


戦いに勝っている確信はある。


彼女が道化ごときに負けるはずなんてないって。


それでも、自分を不安に思わせるのはきっと。


自分にとって長い時間の間彼女の姿、彼女の声を聞いていないからだろう。


じっとしてられない。


そんな彼の性分。


ティナは分かっていたからこそ背を押したのだろう。


ジタンはひょい、と立ち上がると彼女がいそうな場所へと足を向けた。


次第に進む足は速くなる。


足取りも軽い。


早く会いたい。


早く無事を確認したい。


早く声を聞きたい。


早く抱きしめたい。


この手で。


そしたらアイツは……きっと照れながらも大人しくしてるんだ。


誤魔化すように仏頂面をして、隙あらば逃げ出そうとするに違いない。


考えているのは彼女の事ばかり。


息が上がっていることにも気付かず、ジタンはいつしか秩序の聖域に来ていた。


中央の間ではコスモスが座っている。


その隣。


ジタンの意識を集中させていたもの。


幻獣の姿のままのがコスモスの膝元で眠っていたのだ。


神のもとで安眠する天使の光景。


一歩ずつ近づいていくとコスモスはジタンを見据えてふわりと微笑んだ。




「この者も、全てを受け入れた。汚いもの、綺麗なもの……全てを見てきた。


 きっと、そんな彼女だからクリスタルも彼女の前に輝いたのでしょう」




目を閉じるとコスモスはそのまま消えていってしまった。


台座に伏せる。


ジタンは静かに近づいてすぐそばでしゃがみ込む。


ふわりと魔力がゆれての姿が次第に落ち着いていく。


そして伏せられていたまぶたが持ち上がり、第一にジタンを映した。


体を少し起き上がらせては安堵した様子を見せる。




「ジタ、ン……僕ね、僕……」


「ダイジョーブだって!そんな焦んなくっても、ちゃんと聞いてやっから!」




すぐに消えてしまうとでも思っているのだろうか。


慌てて話そうとするラフアェルに安堵に似たため息を吐いて


ジタンはゆっくりと彼女の両方の頬に手を差し入れた。


距離が段々と近くなる。


息がかかって心臓がうるさい。


それは、も一緒のようだった。


壊れないようにそっと抱きしめると彼女の甘い香りがした。




「おかえり、」




ジタンの言葉がすぐそばのの耳にも届く。


くすぐったさを覚えつつもは抱きしめ返しながら言葉を返した。


満面の笑顔で。




「ただいま、ジタン」




ぎゅ、と抱きつくを少し剥がすと以外にも彼女は


少し名残惜しそうにしていた。


可愛いな、なんて呟いてやると今度は思ったとおりてれた風の反応を見せる。


頬を手で包み込んで顔を近づける。


が目を閉じて、それから、唇が重なった。









 +









「怖いんじゃねぇの?」




からかった風にジタンが言うからはむっとしてからかい口調で返す。




「冗談。こっちはこれからの決戦を楽しみにしてるくらいだよ」


「上等!」




最終決戦。


一度は敗れたコスモスと、カオスとの戦い。


混沌と調和。


全てが決まる。




「終わらせよう!」「終わらせよーぜ!」




始まる、戦い。


最終決戦。


全てが決まる戦い。




決着をつけよう、と全員が願った。









この戦いが終われば。


全てが終わって、ちゃんと落ち着いたら。




俺の告白、ちゃんと聞いてくれよな?














(完)
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