[ジタン]“迷”シリーズ第六弾・DISSIDIA FINAL FANTASY(2009.7.23)
















 迷















「だらしねぇなぁ、バッツ」




ジタンが腰に手を当ててあきれる。


ここは次元城。


中々高いポイントにあるその場所は一歩室内を出ただけで


荒れ狂う風を身に感じる事ができる。


下を見てはいけない高さ。


…特に高所恐怖症のバッツニとっては。




「なぁ?ち、違う道とおらねぇ?…なんて」


「そんな時間はない」


「ほら、スコールもこういってんだし、早く腹くくったほうがいいぜーバッツ」


「――、」


「もなんか言って……って、あれ?アイツどこいった?」




さっきまで隣にいたはずのがいつの間にやら姿を消していた事に驚き


ジタンは半ば焦りながらあたりを見渡す。


どこかにおいてきてしまったかなどと考えていると


あまりにもあっさりとスコールは親指である場所を指した。


スコールの後方。


次元城。


その扉の所にはいた。


いた、が……




「え、マジ?」




しゃがみこみ扉にもたれかかっている彼女。


ジタンの予想は残念ながら当たる方向へと進んだ。


盛大にため息をつき落胆しながらよそよそと歩み寄る。


膝を立てながらすわこんで、彼女の様子を探る。




「こりゃあ相当ダメそうだな…」


「う、ごめん…」


「手、繋いでだったら渡れるか?……あ、ダメか


 じゃあ、せめて立て……ないか、うん。


 あー……」




知恵を絞ってみたものの出てくるのはそれくらいだった。


先に行ってていいよ、と自分たちを先に進めようとする彼女。


追いつけるとも思わない、ましてやいつ敵が襲ってくるか分からないこんな場所に


女の子一人を置いていけるはずもない。




「んじゃあ、別ルートで進むかい?」


「い、や…」


「……」


「時間、ないんでしょ?……僕なら置いていっても平気だし」


「いや、置いていくっていう選択肢はねぇぜ?それだったら俺、残るし」


「だめ」


「おい」




かるくこぶしを押し付ける。


気の長いほうではない彼。


しっぽがしゅんと垂れている。


困ってる。


分かってるのに、足に力が入らない。


過去のトラウマ。


まさかこんな所で向き合う事になるとは。


はぁ、とジタンはもう一度大きめのため息をついた。




「ちなみにさ、お前。この風の音が怖いの?それとも落ちそうで怖いの?」


「……。落ち、そうで……怖い」


「よし」




何か決まったようだ。


彼が立ち上がった。


置いていく、のだろうか。


が扉に額をつけたとき、自分の膝裏に彼の手が触れた。


そして脇の所にも。


何をするかと思いきやジタンはを軽々と持ち上げたのだった。




「(お、軽い)……じゃあ俺がいいって言うまで目瞑ってちゃんと掴まってろよ?」


「え…??…、う、うん…。ありが、と」


「おー」




言われたとおりは目をぎゅ、っと瞑って


ジタンの肩に掴まった。


少し震えている。


ジタンは足を進めながら小さく呟いた。




(絶対、落とさないから)




頷くだけで返した。


ジタンはスコールとバッツの横を通り抜けさっさと橋だけは渡ってしまう。


後ろから「あ、ずるい!」と声を投げたのはバッツ。


は自分だけ運ばれてずるい、ととったようだったが、


ジタンは「そんな役得ずるい」という風に捉えニヤリ、とした笑みをバッツへと返した。


スコールがやれやれと後を追おうとする。


バッツは乾いた笑みを浮かべていた。




「スコール…俺も…」


「……。置いていくぞ」




後ろを振り返ることなく進みだしたスコールに遅れまいと


バッツは自力で橋を渡りきったとさ。









 +









「もう、開けてもいいぜ」




ジタンはを地に下ろしてからそっという。


彼女の手は未だに彼に触れたまま。


恐る恐る目を開けた彼女にジタンはそっとキスを送った。




「よく頑張ったな」




よしよしと頭をなでた彼にはぐしゃ、と表情を歪めてジタンに抱きついた。




(役得、役得)




そんなことを考えているジタンがいたりいなかったり……














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