[ジタン]“迷”シリーズ第九弾・DISSIDIA FINAL FANTASY(2009.7.26)
















 迷















まだ話してる。




まだ。


という単語が自然と強調された。


ジタンはその度に眉根にしわを寄せるのだ。


彼が見ているのは少しだけ開かれた扉の奥に見えるの存在。


彼女は今ティナとオニオンナイトと楽しげに話している。




(ティナはいいとしてアイツ…くっつきすぎだろ)




いってしまえば嫉妬。


しかも自分よりもいくつか年下の彼を相手に。


ニコニコと悪意ゼロな笑顔を見せる彼。


彼女は微笑を返しながら会話をする。


聞こえてくるのは楽しげな笑い声。




(おこちゃまのくせに…)




思ってしまってからはっとなる。


あれ?


そういやって。


いくつだ?




(17くらい…か??)




大人びた雰囲気もある反面、自分でも吃驚してしまうくらい


子供じみた雰囲気を兼ね備えた彼女。


ヤケに意地になってつっかっかって行く事もあれば、


さらりと「ああ、そう」と流す時もある。


……全くもってわかりづらい。


けど、そこが面白い所で、好きな所。




「なぁバッツ。って一体いくつかわかる?」


「?…あぁ、確か俺と同じっていってたぜ?」


「…は?…え、お前いくつよ」


「20」


「……今うまく聞こえなかった。何歳って?」


「だから20だって」




いきなりどうしたんだ?


という疑問の視線を投げてくる友バッツ。


ジタンは声にならないように手で口を押さえながら内心悶絶する。


大きく見開かれた瞳は驚きを隠せない。




(え、嘘……って事は俺、4つ下??)




冷静に考えれば「あり」な範囲だろう。


少なくとも彼にとっては。


けれども今のジタンは余裕がない分何時ものようにはいかなかった。


そんな彼をバッツが変な奴だな、と笑う。


それからジタンにとって致命的とも言える一言をこぼした。




「で?お前いくつだっけ?」









 +









完全な夜のお時間。


太陽はとうの昔に沈み居間は世界を月が支配している。


そろそろ、部屋に戻ろうかなぁ。


眠たそうにしているティナとオニオンと分かれ、


ひとり廊下を歩いていると突然呼び止められる。


扉から顔を出していたのは困り果てたバッツ。


あ、その、な?


などと尻込みしているバッツと扉の隙間に入り込み


何事だ、とは部屋の中へと顔を覗かせた。


そして「あー」と項垂れる。


状況は理解できたようだった。




「ちょっとした勝負のつもりだったんだけど……無機になったって言うか…その」


「あーはいはい、ウォーリアには黙っとくから後は僕に任せなって」


「悪いな」


「そう思うんなら勝負なんか吹っかけんなよ」


「お、俺じゃなくてジタンのほうから……って、あ」




思わず口を滑らせバッツはヤベ、と口を押さえる。


はひとにらみしてバッツを部屋から追い出した。


かちゃ、と扉を閉めて「さて、と」と呟く。




室内は暗い。


明かりがついていないのだから当然だろう。


ベッドの上には仰向けに倒れるジタン。


……そして仄かな果実酒の匂い。


主はジタンだ。


は呆れるわけでも怒るわけでもなく


ジタンが倒れているベッドに歩み寄る。


そっとベッドに体重をおろすとスプリングが軋んだ。


僅かに弾む。


それまで視界を覆い隠していた腕が少し外れて水色の瞳はを映した。




「具合はどうよ?ジタン」




静かにきく。


夜の静けさがより強調させられる言葉。


ジタンの視線はにあるものの、無言を貫き通している。


両者の沈黙。


重なり合う視線。


は小首をかしげて問う。


ジタンはそのまま隠すように寝返りを打って背を向けた。


話したくない。


そういっているようだった。




「頭いたくない?お水いる?」


「………」


「……ジタ、……!」




ン。


最後まで言う事はかなわなかった。


勢いよく腕を引かれたせいでバランスが崩れジタンが横たわるベッドへ倒れこんでしまった。


腕を立てることで彼との正面衝突は免れた。


ごめん、と零し起き上がろうとしたの動きが止まる。


下から見上げるジタンの瞳が酷く真面目だったせいだった。


初めて見る表情。


ふ。


一瞬でジタンの表情がいつものように柔らかくなった。




「なんだよー。酔いつぶれた俺を襲う気?大歓迎だけどー?」


「あーもう、この酔っ払い。言ってろよ」


「へいへい、どうせこんなガキは興味ないんですよねーさんは」


「…はい??」




調子に乗ったかと思えば凹んだり。


コロコロと様子が変わる。


やっぱり酔ってる。


けれど凹んだその雰囲気だけはきっと。


本当に抱えていることなのだろう。


はとりあえず、と彼の隣に寝転がった。




「…レディに歳なんて関係ないっていってたのアンタじゃん。忘れたの?」


「……」


「それに僕もそんな気にならないけどな。たかが四つくらい」


「……」


「っていうか遅く生まれたあんたが悪い」


「……ハ、ハハ…」




乾いた笑みを浮かべる。


ジタンはしばらくして彼女に向き合うと「ごめん」と謝った。


はふっと微笑んだ。




「どうする?お水いる?」


「んー、もう寝たいかも…」


「…じゃあ僕は部屋に、……ジタン?」


「このままが、いい」




腕を掴んで彼女が行くのを止めるジタン。


酒の力もあってか彼はだいぶうとうとしていた。


そのせいで何時もより3割り増しで甘えてくる。


もうすでに半分眠りについている彼の金髪をさらりとなでる。


腰のところに彼の腕が絡まった。


ほっとしたような彼の寝顔には釣られるように安堵した。




(僕は前向きでかっこいいジタンが好きなんだよ?)




にへら、と微笑んだ彼の頬を軽くつまんで自分と彼に毛布をかけて自分も目を閉じた。














(悩ませてみたかったけど、悩ませるとジタンじゃない人に…orz)
拍手ありがとうございます。


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