(一部Web拍手掲載)














 きみと、 1















―― さよならなんて、言わないよ?




兄はそうやって消えていった。


ケフカとの最終決着がついた後。


まだ自分たちの世界にいた時のこと。


完全なる魔導の消滅。


幻獣たちも、魔法も、全てが消え去ったあの時。


兄は最後の魔力で私の中の闇の力を吸い取った。


全ての償いだと。


最後くらいはかっこつけさせろと。


震える手を私に見せないようにして最後に笑った。




そして、消えてしまったのだ。









 +









「あ、いて」




ぱちんとバッツの平手がおでこにあたった。


不覚にも。


自分がぼぉっとしていただけに、抗議も出来ずは赤面しながら押し黙った。


面白い。


そう思ったがバッツは決して口には出さなかった。




「なんだよ、バッツ……」


「いや?……今すっげー思いつめた顔してたからさ」


「……、ただの考え事。…それよりいいわけ?ジタンと勝負してんだろ?」




がそっと指差す。


それはだいぶ先のほうでジタンが振り返って待っている所。


距離にして10m。


バッツはやべ、と呟いてはしっていった。


見渡す限りの砂漠。


太陽がないから砂に熱もない。


いたって平凡なフィールドだ。


棒に見えるほど離れた二人を後ろから眺める





「若いな…あいつら」


「(……そういうお前も若いとおもうんだが)」


「あのさ、スコール。僕の後ろでなんか小さくぼやくの止めて?いや、本気で。


 下手すりゃトルネド唱えるからね、僕」


「………すまない」


「いや、いいんだけど。ほら、僕ってさ人が思ってることわかっちゃうからさー」




軽い調子でが言う。


まるでどこぞの盗賊を思わせる口調だ。


影響かなり受けている。


スコールはその言葉を飲み込んだ。


そして、小さく息を吐きながらどうせ俺をからかっているんだ、と納得させた。




「……とか言うと大抵の人間はどうせわかるはずないだろうって思って


 その人の悪口を考えるというのが人の心理――」


「………」


「なんてね。ま、スコールは僕の悪口じゃない事考えてたみたいだけどー」


「…!(こいつ本当に……)」




心が読めるのか?




スコールが探るような目でを盗み見る。


ちらりと彼女と目が合ったかと思うと、彼女はやっぱりにやりとして見せた。


そして唇だけを動かして「う・そ」という。


とうとうスコールは額に手をやってため息を吐いた。




「分かりやすいなぁ、スコールは」


「……悪かったな」


「ん?別に悪くはないだろ?……普通に人間っぽいよなぁ、っていっただけ」


「??」


「なんでもない。……あーちょっと走らないとかも。アイツらもうあんな所に……」




お先。


はとん、と地面を蹴った。


砂の合間から顔を出している瓦礫を器用に渡り


はるか30mほどに開いた彼らの元へと降り立つ。


3人に合流して三人が自分ひとりを振り返る。


それぞれが置いてくぞーだの、早く来いよーだのと


叫んで入るものの声同士が重なっていてよく分からない。


やれやれと、スコールは歩き出した。




(人間らしい…か)




非難めいたジタンの視線を浴びながらさっきの言葉を思い出した。









 +









先に進むにつれて夢を見ることが増えていった。


内容はいつも変わらない。


変わるのは出てくる彼が言っている言葉だけ。


それが段々と重く、暗い、冷たい言葉になっていく。


臆病になる。




(夢が覚めて、君を探してるんだよ)




ずっと身近にいた人。


唯一の肉親。


僕を、大事にしてくれていた存在。




(また逢いたいなんて、僕が思っちゃダメなんだよね)




―― さよならなんて、言わないよ?




だって。









君を手放したのは僕自身なのだから。














(でもどうしてかな)(君が近くにいる気がするの) inserted by FC2 system