きみと、 11














「本ッ当に馬鹿じゃないの?というよりよく生きて逃げられたよね!


 敵の罠に自分からかかるなんて……」




事情を大雑把に話して聞かせるとオニオンはマシンガンのごとくズバズバとまくし立てた。


は思わず苦笑をするしかない。


ティナは少し言いすぎだわ、と少しだけオニオンを叱った。


ティナは甘いよ…。


と少し怯みながらもオニオンは返した。


彼は彼なりに心配してくれているのだ。


ただ、言葉がうまくないだけ。


オニオンは少しだけ言いとどまった。


そしてふと見えたの手首が


ひどい有様になっていることに気がついて黙り込む。


はぎこちなく微笑んだ。




「とりあえず僕はジタンの元に戻るよ。たぶん……ううん。絶対兄さんもいるだろうから」


「(……)……戦うの?」


「そうだね」


「………」




ティナは黙り込んだ。


の兄、とは面識があるティナ。


短い間ではあったがともに旅をしたこともある。


やさしくて。


仲間思いで。


そのためにはどんな努力をして。


そんな彼が敵になったという事実がティナにとっては衝撃的だったようだ。


ティナが不安そうにするからオニオンも困惑していた。




「あれでも兄さんだしね。放っておけないだろ?」


「…!」


「んじゃ二人ともこの先も気をつけて。無事が確認できただけでもよかったよ」


「…。そっちこそ、もう無茶しないでね」


「できるだけ気をつける…かな?」




少しおどけてみせては集中する。


青い光がたまったかと思うとすぐに光は消えてはかき消された。


テレポの呪文だ。


ティナは淡く微笑みながらそれを見送っていた。




「ティナ……僕たちも、進もうか」


「うん」




ティナはお尻の砂を払って立ち上がった。









 +









「ほら…」


「…!」




襲い掛かってきたモンスターを二人で撃退して一息ついたときだった。


ジタンがいきなり声を上げた。


視界をよぎったのは中を回る小瓶。


ポーションのはいった青い瓶だ。


は驚きながらもそれを受け取った。


右手で。


しかしそれはジタンの迷いを確信付ける事へとつながった。




「別にいいのに……」


「お前、小さい傷とかだと結構無視したりするからなぁ。ちゃんと使っとけって」


「……。ま、ありがと」




腑に落ちない様子ではあるがは頷いた。


そして言われたとおりにポーションの瓶のふたを開けた。


ジタンは僅かに目を伏せた。




は……左利きだぜ?)




心の中でこっそりつぶやく。


目の前の彼女へと。


そして、自分へと。


これからを考えたとき。


ジタンは今までどおりを勤めることを選んだ。


だって今の彼女に敵意は一切感じられない。


ただただ今を楽しんでいるような雰囲気だった。


切羽詰っている雰囲気もわずかに感じられた。




(早くを探さないと…)




目の前の彼女が完全にに近い。


似ているというだけで同一というわけではない。


彼女が誰なのか、という事も確かめる必要がある。


それにはやはりに会うことが一番の近道だとジタンは考えた。




「どこいったんだろうな、バッツの奴――」




何気なく呟いたとき、声が聞こえた。


自分たちが進んでいるさらに奥のほうから。




『一人ではないと信じているからこそ一人で戦う道を貫く!』


「!この声」


「スコールの声……!」




よく見るとスコールがアルティミシアとガーランドの二人に囲まれているではないか。




『どうする、まだ強がるか?』


『――むしろ都合がいい。ここでお前たちを倒せばその分あいつらが楽になる


 証明してみせる。離れていてもともに戦っていることをな!』




ジタンは「あいつ――」とつぶやいて一気に走り出した。


も“彼女”の意識にしたがって後を追った。


しかし足を一歩踏み出した瞬間ドクンと体が脈を打った。


懐かしい感覚。


大きく目を見開いた。


は思わず足は止まってしまったがジタンはそのまま飛び出していった。




背後から狙っていたガーランドを思いっきり蹴り飛ばすジタン。


思ったより簡単に吹き飛んだ。


すぐ隣には桜色の髪が舞っていた。


ぐ、とそいつを睨み付けて共に蹴り飛ばしていたのだ。


彼女はジタンを見て少し驚いていた。




「ジタン!よかった、無事みたいだね!」


「え?あ、あぁ…無事だけど。……って、もしかして、本物!!?」


「本物って何だよ、本物って。あれ、そういえばバッツの姿が……あれ?」




困惑している


彼女いわくジタンを探してテレポで飛んだのはいいものの


降り立った場所がこの場所ですぐそばでは挟み撃ちを食らっている


スコールの姿があったから迷わずけり技を繰り出したと……。


一人つじつまが合わないことを話している彼女。


今までいなかったということを考慮すれば


彼女が本物のだということは必然的だった。




背後の存在が一瞬にして消えてスコールは「ジタン!」と名を呼ぶ。


ジタンはスコールに気がつき「かっこつけすぎだろ、スコール!」とちゃかした。




「どうして?」


「誰かを助けるのに理由がいるかい?」


「……(へぇ)」


「でっかいおっさんは俺に任せな!」




そういってジタンは二本のダガーを両手に構えた。


詳しい話は後で話してやるからな、とに言った。


スコールはアルティミシアと向き合いすぐさま戦いを始める。




「んじゃ、僕も……ちょっと蹴りつけてくるかなぁ」


「おう!」




ちらり、と上を見上げる。


階段の最上部に自分と同じ姿をした兄の存在があった。


はつまらなそうに舌打ちをしてから、トランスを解いた。


変化といえば性別が変わり髪が短くなったくらいだった。


もともとは双子。


顔のつくりもそんなには変わらない。


剣を構えて彼は自分を手招いた。


は一度悲しそうに目を伏せてから地を蹴り彼の元へとと舞い降りた。




今。


双子同士の戦いが始まる。














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