きみと、 14














クリスタルの温かみに触れる。


光が、疲れきっていた体にじわじわと力を与えていった。


漲ってくる。


は自分を落ち着かせるように息を吐いた。


少しだけジタンのほうへと寄り添っていた。


ジタンは何も言わずにじっとしている。


このままだとずっとこうしていたいなんていう甘えが出てきそうだったので


はしぶしぶと彼の元を離れた。


一瞬胸が重くなるのを感じた。


スコールが見計らったように紡いだ。




「ジタン、借りができたな」


「気にすんなって……。とか言ってる場合じゃない!大変、大変なんだよ!」


(大変なのはお前のテンションじゃないのか…)


「バッツが――バッツが!」


「…?バッツがどうかした?」


「罠にかかってどっかに飛ばされちまった!急いで助けに行かないと!」




ドジ。


そういいたいところだが自分も大層な敵の罠に


かかってしまっている身なので何もいえずに暗黙した。


必死なジタンの訴えにスコールは「わかった、いこう」とうなずいた。




「え――いいのか?」


「返すものもあるしな」


「あ、それ……バッツが持ってた羽」




バッツと長い間中旅を共にしたチョコボのボコの羽。


黄色い羽を大事そうに持っていた。


思わず「それだけ?」と零したジタンにスコールは改めなおして




「――仲間、だからな」




しっかりと言い放った。


は口の端を持ち上げる。


一時間を置きながらもジタンは「おう!」と相槌を打った。


そのとき。


シュン。


頭上で音が鳴りシルバーのクリスタルが現れた。


同時にスコールの持っていた羽も光り輝く。


羽はふわりと舞い上がりクリスタルと共鳴した。


そしてそれらは一筋の光を作り上げる。


光の道は壁を通っておくまで続いているようだ。




「これ――この先にバッツが?」


「行ってみよう!」




は立ち上がり二人を促した。


二人は頷いて共に歩き出した。




「待っていろ…」




スコールがポツリとつぶやいた。









 +









「バッツの奴敵の罠に落ちるとは――」




クリスタルの光に導かれるままに道を歩きながらスコールはあきれた風に言う。


は再びしかめっ面をした。


二人の後ろを歩いていたので表情を悟られずにすんだが。




「悪い、お互い張り切りすぎちゃってさ。……そうだ!思い出した…っと、


「え、何?」


「俺に会うまでにバッツの奴に会ってない…よな?」


「え、うん。ティナとオニオンにはあったけど……バッツはあってないよ」


「そっか!」




スコールとは顔を見合わせて首をかしげる。


ジタン一人なにやらうれしそうに笑みを浮かばせていた。


を先に見つけたほうが勝ち”というゲームで、どうやら勝てた、とのこと。


内容を聞いてスコールはため息をついた。


そんなことか。


ぼそりと聞こえた気がした。




「気をつけろ。向こうはお前を狙ってる奴もいる」


「こっちだって狙った獲物は逃がさない。すぐにバッツを助け出してやる」




ジタンのいつもの強気でを安心させた。


本人にそのつもりがなくても、にとっては心強い言葉になった。


痛みは引いたものの裂けたような傷が残る手首をそっとなでた。




「その傷…!」


「…あはは、抜け出すときドジちゃった」


「………抜け出す?」


「おっと」




不意に零した言葉にスコールが反応した。


は思わず口を噤んだ。


ジタンは傷を見て酷く心配そうな顔をした。




「ま、いいだろ別に。今無事なんだし!この傷は治りそうにないけど、もう痛みもないしさ」


「……でも、」


「そんな深刻そうにするなよ、ジタン。僕だって戦士の端くれなんだし、


 ……これくらいの覚悟はできてたよ」




思いつめないで、と優しい声で言う。


そのときの苦痛を伴わせない気遣いにあふれている。


ジタンはずっと握り締めていた手のひらをやっと緩めた。


完全ではないものの納得してくれたようだった。


そして。


ジタンは手を握って、隣で歩き出す。


離さない。


そういう意思の現われだろうか。




「なぁ、……」


「何?ジタン」


「……。この戦いが終われば、やっぱ、は…元の世界に戻るんだよな?」


「…そうだね」


「………」




ジタンは黙り込んだ。


何か思いつめている様子だった。


それが何なのかにはわからない。


少し俯きがちな彼の瞳を見ては疑問に思うだけ。


しばらくするとジタンはなんでもない!と笑みを返した。


もぎこちなく微笑んだ。




戦いが終われば。


それぞれが元の世界に戻る。




それは。




二度と会えなるということ。














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