(一部Web拍手掲載)














 きみと、 2















「まさかこんな収穫があるとは…な」




暗闇の世界。


カオスの力の集う空間。


暗闇の雲はご機嫌に触手を動かしながら言った。


その言葉にクジャは興味深そうに頬からあごにかけてをなでている。




「へぇ、この子が……。あんまりたいした事なさそうなんだけど……


 本当に大丈夫なのかい?ケフカ」


「まぁまぁまぁ今に見ててくださいな。きっとぼくちんの期待に応えてくれるはず……」




ヒッヒッヒ。


とケフカがおでこに手をあてがい体を反らしながら笑いを堪えている。


その様子に僅かな不快感を覚えつつも“その子”への興味が引かないらしく


楽しそうなまなざしで見下していた。


気を失っている“その子”からは微力な力しか感じられない。




(へぇ、この子がアイツの……)




“その子”を見つめ弟の反応を想像すると可笑しくて仕方がなかった。




時間は数時間ほどをさかのぼる。









 +









砂のフィールドを越えると月面のような空間に変わった。


でこぼことした大地だけに気が抜けない。


こちらには敵の魔力に反応できるがついているものの


場所を察知できるだけではやや手厳しい。


高く聳え立つ岩のおかげで視界も狭く、反撃、回避が僅かに遅れるのだ。


はできるだけ全員のそばを離れないようにして歩いた。


杖を握り締め、反応があればすぐに戦えるように備えたのだ。


スコールが抜けた今、バッツとジタンに戦闘を押し付けるわけには行かない。




「なんだか、嫌な心地……」


「少し休むか?ここの所戦いが続いてるし……なぁジタン」


「そうだなぁ。ここで焦ってもしかたねぇしな」




二人の言葉は自分をさしている。


は首を振った。




「疲れてないよ。僕は大丈夫……それより僕は二人のほうが心配かな」


「まだまだいけるよな?バッツ」


「あぁ、全然余裕だぜ?」


「そう。ならいいんだ」




先に進もうぜ。


は一人前を歩き出した。


二人は一度顔を見合わせてからの少し後ろを歩く。


ぴたり。


の動きが止まった。


体を硬直させている。




「反応か!?」


「わからない…。でも音が……」


「音??」




耳を澄ましてみるものの自分たちには聞こえないようだ。


はあたりに警戒の目を配らせながらこめかみに手を当てる。


ただの耳鳴りならまだしもこんなに警戒しているという事は……


ジタンは咄嗟にダガーを手に取る。


バッツも戦闘に供えてこぶしを手のひらにたたきつけた。




「耳障りな、音……声?……あ!」




がふと峡谷のてっぺんに視線を投げる。


そして小さくも確かに映る人物をにらめつけた。


金色のよろいを身に纏う……皇帝だ。


余裕げに微笑むと口を動かす。


ジタンは「何言ってるんだ?」とより警戒の色を増した。




「…よ…く……い…ば…しょ…が……わか…た…な」


「そういってるのか?」




彼の言葉に集中している彼女はバッツの言葉に頷くだけだった。


視線は彼を捉えたまま。


ほう。


集中しているせいで足元の光に気がつかない。




(……あ…し…も…と…を…み…て…み――)




今度は言葉に出来なかった。


そのせいでバッツとジタンには伝わらなかったようだ。


は慌てて足元へと視線をおろす。


ジタンの足元に小さな魔方陣が出来上がっていた。


トラップ――!


は言葉よりも先に体を動かしていた。


両手を突き出すと彼は魔方陣から外れた。


しかし。




「――ッ!しま…っ!!」




… 雷の紋章 …




ぶわりと広がった魔方陣。


光が強まる。


体中を悪寒が駆け巡る。


思わずうずくまり押し殺した悲鳴を上げる。


眩さに目を暗ませた二人。


それでもジタンは彼女へと必死に手を伸ばした。


光と声が完全に消えてしまう。


僅かな光が天をと召されているだけで彼女の姿は何処にも見当たらなかった。


そして皇帝の姿も。




二人がその場に腰を下ろしている。


ジタンの指先は彼女がいた場所に伸ばされたままだった。


しばらくしてようやく事情が飲み込めると自分の無力さを悔やみ


こぶしを大地に打ちつけた。




「くっそーーッ!!!」




峡谷の合間に僅かに木霊した。















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