きみと、 25















クリスタルの光に導かれる二人。


クリスタルのフィールドをすぎ、次元城へと誘われた。


橋の向こうで2人の人影を見つけてジタンは


「おーい!」と声を上げながら駆けていく。


後ろからはほんの少し遅れながらも彼女が付いてきていた。


それが何よりも嬉しかったのかもしれない。


いつしか表情が緩んでいた。




(信じて待っていてくれる人がいる、


 だからオレはどんな試練にも立ち向かえるんだ)




そっと胸にしまっておこうと思う。


いつか。


そのときがきたら彼女に伝えたい。




(今までも、そして、これからもきっと――帰ろう、いつか帰るところへ)




できれば君と、共に。









 +









橋を渡った先に見えた影はバッツ、スコールのものだった。


バッツとジタンが感動の再開シーンで花のオプションと共に広場を駆け回り、


スコールがそれを遠い目で見ながら距離をとっている。


苦笑しながらスコールに近づくと「どうにかしてくれ」という


非難めいた視線を返してくれた。




「無事だったか」


「心配かけたね。…そっちも色々あったようだな」


「わかるのか?」


「うん……僕の傍に四つのクリスタルを感じるもの」




スコール、ジタン、バッツ…そして自分のクリスタル。


胸から溢れてくるこの愛おしさ。


目を閉じると、より身近に感じられるような気がした。




「なぁ、他の皆ももう集め終わってるんじゃないか?」




バッツの言葉をきっかけにその場にいた全員の、


これからするべき行動が決まった。


クリスタルを手に入れた仲間たちはきっと一つに終結するだろう。


これから、本当の闘いがはじまるのだ。




「行こう、みんなの元へ」




誰かが言って、全員が頷いた。









 +









きっと遠い未来。


それは手の届かない場所にあって。


懸命に手を伸ばして。


掴もうと足掻くのだけれど。


風のように。


するりと抜け落ちて。


零れ落ちるものだと思っていた。




光は遠い。


段々と沈んでいく躯。


深い海。


群青色の水。


否。


群青色はきっと空――。




いつかの自分が見上げていたもの。


遠い昔。


幼い自分が夢見ていたもの。


現夢。


夢幻。


幻想。




―― 幻想に終わりはない。




誰かが言った。


脳裏に。


確かに焼きついている。




心地よい水の温度。


ひんやりしているのに。


ちゃんと自分を受け入れてくれる。


包んでくれる。




あぁ。


でも。


抜け出さなきゃ。


還らなきゃ。


ここから……




―― 何処へ還るって言うの?


―― 君に居場所なんてあるの?




兄さんの声をした紛い物。


知ってるよ。


ううん。


気づいたんだ。


最近。


君は。


君の声は。


本当は――




段々と闇の潜む海底へと沈んでいく。


光が遠のいていく。


戸惑い。




「 僕はもう、いくよ 」


―― 何処へ?


「 皆のところだよ。きっと待ってる 」


―― そんなの、わからないよ。それに、僕に仲間なんて、いないよ。


「 いるよ。ちゃんと、君にだって仲間がいるんだよ 」




いつもの夢。


夢のハザマ。


自分にずっと背を向けていた存在。


それはきっと、自分。


弱くて、自分を守ることで精一杯だったときの――自分。




―― 怖いよ…僕はいつだって独りなんだ


「僕がいるじゃない」


―― 君は僕を置き去りにしていく。また、僕は…


「いつだって、共にいるよ」


―― もう嫌だよ、怖いよ




夢に出てきた人物の正体。


弱い自分。


暗闇に閉じ込めていた本心。


そうせずにいられなかった世界。


僕の望んだ世界ではなかった。



でも、今は違う。




「逃げないで」




自分へと、手を差し伸べる。


そっと微笑みながら。




“皆”が、僕にそうしてくれたように。


僕も君を受け入れるよ。




「周りを見てごらん、君には……僕には、たくさんの仲間がいるんだ。


 あのころとは違うし、僕自信も……変わった。


 もう怖がらなくてもいいんだよ。独りで怯えてないでいいんだ。


 もし君が独りになってしまったとき、隣に僕がいるのを覚えていて。


 僕だけじゃないみんな、傍にいるってコトを――」









光が消えて意識は覚醒をはじめる。


周りのもやが晴れていく。


仲間たちの影が少しずつ鮮明に見えるようになっていった。




“ 周りを見てごらん ”




みんなが僕を待っている。


あぁ、早く起きないとな。




“ 僕には、たくさんの仲間がいるんだ ”




現実とのハザマで。


最後に君の笑顔が見えた。




僕の、笑顔。














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