きみと、 26















まるでクリスタルが自分たちを導いているかのごとく仲間たちとは合流できた。


フリオニール、クラウド、ティーダと順に合流し同じ道を歩いているとき


ティナとオニオンナイトの姿を見つけては顔をほころばせた。


視線があうと互いにぎこちなく苦笑する。


きっと。


ティナが抱いているのはのこと。




「待ってる、だってさ」


「――!」




一瞬驚いた表情を見せて俯いて、頷いた。


表情は明るい。


今にも瞳から涙がこぼれそうになっている。


胸に抱くのはきっと喜び。


安堵の息がこぼれた。


堪らなくなってはティナを抱きしめた。


双生児である兄のことを思ってないてくれるティナが、愛おしくて仕方ない。


絆。




「私たちの世界を守らないと。…そしてみんなの世界も――そのためにも今は」


「あぁ、今は――混沌を終わらせよう」




慈しみの心。


無我から生まれた狂喜。


破壊と滅亡の戯曲。


シナリオ。




自我の芽生え。


確立した意識が孵化する。




“ 世界が砕けても輝きを失わない光、クリスタルを―― ”




クリスタルは揃った。









 +









   全ては覚めない夢




調和の神が言った。


凛とした声が耳の奥に残る。


掻き消えてしまう間際のあの心地よさには安堵させるものがあった。




   それでも――




アクアの瞳が光を宿す。


その瞳に映るのは11人の戦士の姿。


光の舞う羽衣を靡かせ、地に足を下ろす。


天女が舞い降りたような光景だった。


そよいだ風が戦士たちを導く。




   幻想は必ず終わる




風が、言葉さえもかき消してしまった。









 +









この秩序の聖域に11人の戦士が集結した。


ウォーリア・オブ・ライト。


フリオニール。


オニオンナイト。


セシル・ハーヴィ。


バッツ・クラウザー。


ティナ・ブランフォード。


クラウド・ストライフ。


スコール・レオンハート。


ジタン・トライバル。


ティーダ 。







其々が願う平和。そして約束。


其々が望む世界。そして幸福。


其々が描く夢幻。そして未来。




ここに。


この秩序の聖域に11のクリスタルが集結する。


其々の希望が託された、唯一のヒカリ。




「終わらせよう、この戦いを!」




ウォーリアが一歩踏み出していった。


戦士たちが心身を緊張させる。


がそわそわして落ち着かない胸元に手を当てた。


どうしてだろう。


決着のときだと言うのに。


胸騒ぎが、止まらない。




「いいえ――既に決着は付いています」




ドクンと胸がはねた。


恐る恐るコスモスを見上げると、コスモスはまるで大地に惹かれるように崩れ落ちた。


息が止まりそうになる。


仲間たちの不安が皮膚を通して心を振るわせる。




「あなたたちは――真の闇に堕ちるのです」




空が、荒れる。


まるで心を映すように。


黒く、赤くどよめく。


雷光が迸り、世界は廻り、あたりは地獄と化す。




似たような感覚を、今頃思い出した。




自分のいた世界で犯した罪。


魔封師である自分が決してしてはいけないとされていた禁忌。


封印をとけばどうなるか、その意味を知っての事だから尚更性質が悪い。


三闘神の復活。


魔神、女神、鬼神の封印の開放。


力を解き放てば、その力は暴走し、世界は滅びる。


その日、世界は滅びた。




  ――ヨクモ




  頭に容赦なく声が叩き込まれる。


  言葉が詰め込まれる。


  張り裂けそうになる。




  ――ヨクモ ワレラヲ




  息が苦しい。


  悪寒。


  いやだ。


  いやだ。


  じわじわと蝕んでいく。


  視界が急に暗くなった。


  それは……




  ――ヨクモ ワレラヲ オコシタナ――




  神の逆鱗に触れた罰。




数年たった今でも、あの日の出来事はよく覚えている。


否。今自分に置かれているこの状況がそのときの記憶を思い出させた。


神々の闘争。そしてその行方。




「コスモス?」





視界の隅に残された光が見えた。














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