(一部Web拍手掲載)














 きみと、 3















秩序の聖人。




皆に少し遅れて来た僕をコスモスはそう呼んだ。


さきに集った10人の戦士たち。


10人に囲まれながら僕はコスモスの前で膝を突いていた。


そこで、ふわりと目が覚めたのだ。


感覚や意識がよみがえる。


見上げるとコスモスは微笑していた。




“ 貴方もまた私の戦士として戦ってくれますか? ”




戦う。


その言葉を聞いて僕の内心は揺れた。


戦いたくない。


争いは何も生まない。


争いは争いを呼ぶ。


また。


あの時みたいに。




大事な何かを失ってしまうんじゃないか?




“ 混沌を司る神、カオスは世界を乱し、支配する事を望んでいます ”




そんなの最悪じゃないか。


僕は黙っていた。


それでも、コスモスには伝わったようだった。




“ 私は、世界を守りたい―― ”




体中の何かがざわめいた。


鳥肌が立つ。


強い意思だった。


何者にもくじける事のない願い。


思い。


僕は一度頷いてみせた。




「 秩序の聖人の名に置いて、微力ながら貴方の力となりましょう 」




僕も負けじと強い気持ちをこめて言うとコスモスの瞳は潤った。


そして「ありがとう」と呟いたのだった。




そこで、意識は途切れ夢は終わった。









 +









ここは、どこだ?




目覚めたと同時に体中が軋んだ。


すぐそばに強いカオスの力を感じたものだから


はこのまま気を失っているふりを続ける事にする。


そうしながらも少しずつ意識の視野を広げていった。




(腕が、拘束されてる……魔法が使えない……)




束縛しているのは頑丈な鎖か何か。


自分の腕力では到底断ち切ることは出来ない。


それが縄かもう少し細い鎖ならば手首の間接をいじって抜けることも出来ただろうに。


あえて太い錠つきの鎖にしたのはそんな物では


彼女を簡単に逃がしてしまうと知っている人物だ。


ケフカ、で間違いないだろう。


ならばこの近くにケフカがいるかもしれない。


それに身近に感じるカオスの気配は同じ室内にいるではないか。


しかも、複数。


広い空間だけあって言葉同士がこだましている。


は流石に全員相手だとこちらに勝機はないなと察した。




(目に何か覆ってるな)




恐る恐る目を開けてみたところ映ったものはなにもない。


肌をこするこの感触はただの布だ。


その辺のはし布か何かを目を覆うようにして頭に結び付けたんだろう。





(魔法も使えない。拘束されてて戦えない。おまけに何も見えないんじゃお手上げだな)




ジタン、どうしたらいい?


ふとよぎったのは彼の真剣な表情。


そして何時もみたいに明るく笑って「待ってろよ、すぐに行くから」というんだ。


すこしだけ、こんな状況なのに安心できた。




―― ジャラ…




(あらら、しくったな……)




安心の拍子に手首を動かしてしまった。


緊張が薄れたせいだ。


カオスたちの声が消えて全ての意識がこちらへと向っている。


目は見えなくとも、わかる。


魔力や意識、気配なんかは強い者であれば拾う事ができる。


恐らくそれは自分の中に半分流れる幻獣の血によるものだろう。




は今まで起きていた事を誤魔化すためにかすかに身じろいでみせた。


すぐそばに誰かが膝をつけた。


鎧の音はしない。


…女か?




「目が覚めたようだな。気分はどうだ?」




やっぱり女だ。


魔力が強い。


魔力がひしひしと肌を通して血まで伝わってくる。


「最悪」


と答えると女は薄い笑い声を上げた。


面白くなかったから「ここはどこだ」と聞いてやった。


すると女は一変して僕のあごを捉えてから




「だれが質問する事を許した?」




とのどを震わせるような低い声で言った。




ダメだ。


こいつら相手に探りは厳しいな。














(さて、この状況どうしたものかな……) inserted by FC2 system