きみと、 33















時の鎖は既に途切れた。


カオスの軍たちが蘇ることはもうないだろう。


輪廻は終わりを告げ、真の滅びが訪れようとしている。


――真の滅び。


そう、目覚めたのだ。


究極の混沌が――


カオスは強大な神の力で己もろともこの世界を葬り去る気だ。


自分もろとも、世界を。


混沌とは全てが交じり合い形を失うこと。


存在の否定こそ究極の混沌(カオス)だろう。


戦いを終えても喜びも、栄光も、救いも、未来もない。


コスモスなき今、カオスにとっての世界など…


ただ虚しいだけのもの。


虚しさゆえ、全て消し去ろうというのだ。


それが神の決断――


世界が形を失うならまた別の輪廻を探すまで…


時を超え、次元を超え、戦いの魂は永久に生き続ける。


さらばだ、コスモスの戦士達。


次は地獄で戦おうではないか――




ガーランドの魂がこの世界から放り出された。


消え行く一瞬の光まで、は目をそむけることはしなかった。


この扉の向こうに、カオスがいる。


――これが、最後の戦いだ。









 +









仲間達が自分の進むべき試練を超えて再びこの地へ集結した。


その中には勿論、もいる。




「世界を道連れに生まれる真の混沌――」




ウォーリアがそう言うやいなや、仲間達全員の身体から


またあの時と同じように光が溢れ出した。


蛍のような光が身の回りを舞う。


それを吹き飛ばすようにティーダが声を上げた。




「まだだ!消えてなんかいられるか!」




薄暗い厚い雲が世界を覆いつくそうとしている。


調和が消え、混沌が支配しているのが原因だろう。


荒れた風が吹いていた。




「カオスは自分の哀しみをも消し去ろうとしているの?」




ティナが呟くように言った。


セシルが続ける。




「対となる神コスモスを失い孤高の存在となった哀しみ――」


「支えをなくした混沌が全てを覆い尽くそうとしている」




が風を読み言葉を紡いだ。


吹き来る風が沈黙をさらっていく。




「そんなの――僕は認めない!


 全部なかったことにするなんて逃げてるだけじゃないか」




オニオンナイトが叫んだ。


バッツはそれに頷き自身のクリスタルを手に取った。




「コスモスは逃げずに希望を持ち続けた。


 クリスタルにはその想いが詰まってるんだ」


「俺たちは運命に従うだけの道具じゃなくて――


 守りたいものや夢があったからこそ戦えた」


「誰もが己の道を進むのをやめたら消えたも同然という事だ。」




全員の決意がまとまるのを肌に感じた。


進む先。


目指すもの、望むものが同一する瞬間。




「俺たちは最後まで道を貫くそして――カオスに教えてやろう」


「ああ、命に限りはある。けど、残せるものは確かにあるってな」




いつもの余裕の表情を浮かべながらスコールは言った。


そしてそれをジタンがクリスタルを手に紡いだ。


戸惑い、迷い、悩んでいた戦士達が自然と


本来の自分へと戻っていくのが見て取れた。




「コスモスが我々に希望を残したように、


 我々はこの世界に希望を、光を繋ごう」




視線が中央にいるへと結ばれていく。


全員の視線を感じてはより引き締めながら頷いた。




「 終わらせよう 」




混沌を――









 +









マグマのように地平線が燃えている。


そのくせ上を見上げれば暗黒の闇が世界を包もうとしていた。


混沌の果て――


長い階段を上った場所にはすでに全員の仲間達が


その先の人物――カオスを見据えていた。


これが最終決戦なのだ。


これを終わらせなければ、何も始まらない。


負けは許されない。


カオスとともに、混沌の闇の中へと放り出されるだけ。


後には何も残らず、唯一の無だけが残る。




だが、そうはさせない。


全員が武器を片手にカオスと対峙する。




「幻想の果て」


「混沌すらも」


「その身を散らす」




巨大なこうもりのような翼を縮め、一気に開放する。


空全体が波紋が広がるように焼かれ、


だいぶ離れた場所にいるはずのコスモス軍を身構えさせた。




「長き戦の終焉――」


「ここに刻もうぞ」




戦いが幕を開けようとしていた。


誰一人失わないためにも。


誰一人犠牲を出さない為にも。




最後に託されたこの調和の力で。














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