(EDネタバレ注意)














 きみと、 35














見上げるとそこは一転の曇りのない青空で。


まるで散歩やピクニックでもしたくなるような晴天日和だった。


一言でその光景を表すなら平和で、いままで戦いの中にいた


彼等にとっては違和感を覚えずにはいられないような場所だった。




「(嘘みたいだな…カオスと戦ったことがまるで遠い昔のことみたい…)」




平和ボケしてしまいそうなこの環境に


思わず欠伸が出そうになるのをかみ殺す


日差しはとても温かく陽気でどこからか小鳥のさえずりが聞こえてきそうだ。




「全て終わったのだな――」


「うん…」




キン…と光を放ったのはティーダのクリスタルだった。


それはとても温かい光でいやな感じはしないもの。


…けれどは空を見上げたまま彼を見つめることはしなかった。


これが別れだと、知っていたから。




「お別れ、か――大丈夫、この先はクリスタルが導いてくれる


 それに――俺はここにいるから」




満面の笑みで、ティーダは言った。


ぐっと握りこぶしを作って見せると


そのまま湖に飛び込むようにして――消えた。




「消えるんじゃない、帰るんだ…約束の場所に」




木の枝に座っていたジタン。


ティーダ同様クリスタルの輝きに導かれるようにして、木漏れ日に消えていった。


は決して振り返らない。




「また、ともに任務を果たすのもいいかもな」




スコールは舞い降りてきた羽根をつまみ、そして消える。




「興味ないね」




とクラウドがいい、つられるようにして姿を消した。


一つ一つ存在が遠のいていくのをは感じていた。


それでも、決して見ることはしなかった。


決意は固かった。




「私これからは頑張れるよ。だから――さよなら」




ティナが薄く微笑み、消える。


木の枝を投げたバッツ。




「楽しい時って何であっという間なんだろうな」




呟くや否やクリスタルが彼を包み込んだ。




「繋いでみせる…皆にもらった強さを」




次は、セシル。


昼間に出た月が酷く印象的だったという事を


はきっと見ていないのだろう。


そんな彼女を一目見て、そしてオニオンナイトは


自分のクリスタルを抱きしめた。




「みんな!ありがとう!」




青い空を見上げながらオニオンナイトも消えた。


残る存在が三つになる。


ウォーリアが歩き出し、フリオニールは何気なく


大地に咲き誇るのばらを見下ろし、微笑んだ。




「終わらないさ、新しい夢が始まるんだ」




決意を胸に、消える。


カシャン、カシャン。


ウォーリアの鎧の音がへと近づく。


次はきっと――彼女の番だ。


ここは、ウォーリアのいた世界なのだから。




「あーあ、皆ばっかかっこつけてさぁ…」


「……」




空を見上げている


その頬は、ぬれていた。


言葉もどことなく震えている気がする。


最後の強がりだった。




「ジタンとともに、行かなかったのだな」


「馬鹿いわないでよ。こっちの本職は魔封師だよ?


 仕事ほったらかしで…父さんとの約束破るなんて事できないよ」


「本当にそれで後悔しないのか…?」


「しないね、断言できるよ」


「……」




十字架の形をしたクリスタルが輝きだす。


すべての戦士達を最後まで見届けた


これでもう彼女の役目は終わった。


だから――帰るのだ。


のいた世界へと。




「――だから早く、仕事を終わらせなくっちゃね」


「!」




最後に笑った。


他の仲間同様、これで彼女は元いた世界へと帰っていった。


ウォーリアもふ、と微笑む。


彼女の意図に、どうやら彼は気がついたようだった。


カシャン、カシャン、と再び歩みを進めていく。


そして――。




「光は我等とともにある」




彼女が最後に見ていた空を見つめ、呟いたのだ。









 +









おかえり、と兄が笑った。


ただいま、と妹が笑った。




そして兄はいってらっしゃい、と笑った。














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