クオル














 うたが始まる














夕暮れどきの伸びた影。


山吹色の空の彼方。


色褪せたセピア色。


座り込む少女。


――紅。




「まだ足りないね、」




少女はにやりと唇に嫌味な笑みを浮かばせていた。


少女は物足りないといった様子で笑んでいた。









 +









「任務、無事終了いたしました。


 尚、肯定より任務終了後、速やかに撤退せよとのご命令です。


 隊長のご命令により帰還しましょう」




敬礼一つしてさらさらといい述べる彼は


だいぶこの仕事に慣れてきている。


気をつけをしたまま再びクオルの口が開くまで


ぴくりとも動かない彼はまるで忠誠心の高い子犬のようだ。


クオルは曖昧に相槌を打ってから、


自称に次の指示を出す。




「ではこれより帰還する。船の準備を」


「すでに準備してあります」


「…そうか。それでは兵達に帰還することを伝えろ」


「はっ!」




ブーツを鳴らし、一度敬礼する。


用件を済まし、たった今指示されたことを実行するために


くるりと種を返した


そんな“彼”にクオルはさっきとは違った


緊張感のない声でを呼び止めた。




「ほら、


「……………なんですか、この紙」


「見たらわかるだろ、報告書だよ。メンドイからお前が書いて提出してくれ」


「…隊長、普通はそういった私情を隠すものです」


「事実は事実だろうが」


「………。隊長って性格が取り返しのつかないほど最悪ですね」


「お前にだけだよ、バーカ。少しは感謝しろ」


「金輪際貴方には話しかけないことにします。


 後自分、そういった趣味はないですから。


 報告書も興味ないです、自分で書いてください」


「隊長命令」


「丁重にお断りします」




ふい、と視線をそらしては押し付けられた


白紙の書類を彼へ押し戻す。


平然を装って見えるが内心あせっている。


クオルは視線を一度上へ上げてから思慮する。




「まさか、文字がかけないってわけじゃあるまいし…」


「…………」




あからさまに視線をそらした


それをクオルは見逃さない。




「………書けないのか…?」


「か…!書けますよ…っ!」


「はい、それ嘘」




かけないなら最初からそういえよ…


とクオルはやや乱暴に自信の黒髪をぼさぼさにする。


ぐっ、と押し黙った


追い討ちといわんばかりにため息を投げた。




「んじゃあ、今まで一回も報告書とかその手のもんは


 書いたことないってことで話し進めるけど…」


「………仕方ないじゃないですか。今までは隊長がかかれてましたし、


 急なときでもケフカ様が適当に……」


「ケフカ、ね……。んじゃあ誰にも習わなかったってことだな?」




「習うって―――誰に?」




素朴な疑問の問。


それを聞いてクオルは地雷を踏んだ、とすぐに理解した。


聞いてはいけないことが人には2.3はあるだろう。


それを見事、的に得てしまった。


ぼぉ…とすきだらけの表情ではクオルを一心に見つめる。


そして少し目を伏せた。




「今日から夜、暇だったら俺の部屋に来い」


「は?なん――」


「教えてやる。俺がな?感謝しろよ」


「お断りします」


「隊長命令」


「職権乱用、自分勝手、我田引水……」


「そんだけ知識がありゃーすぐに覚えられるな」




直後が黙ったのは言うまでもない。


ふん、といわんばかりに彼に背を向けると


早々とテントを出て行く。


クオルはほう、と微笑んでいた。









 +









廻れ、


廻れ、


踊り狂え、


最後の一人、




クレイジー・ドール









始まりはいつから?














続きます。

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