クオル














 いずれ絶望は光に紛れる














でないと貴方が、死にますよ?









 +









断末魔の合間に見た地獄。


悲痛な叫びが旋律となって地獄に木魂する。


終焉を描こうか。














何度も夢に見た





笑顔だらけの世界




皆笑っていて




君も笑っていた




それが当たり前で




とても満たされてた




夢が醒めた時に




僕は独りになった…









求めてた温もりは




何処か遠くにあって




何もない掌を




空にかざす




探してた愛情は




きっと近くにあって




僕の歌




どうか









君に届け――









一片の願い。


散血に塗れ、


頬の涙は血痕に浮かび上がるように軌跡を描いた。




いずれ絶望は光に紛れる









 +









始まりがいつだったかなんてはっきりとは覚えていない。




ただね、


一緒にいたかっただけなんだ。




兄さんと、


母さんと、


父さんと、


ティナと、


ラムウのおじちゃんとか、


皆に囲まれながら私―――




ただ泣いたり笑ったり怒ったり…


普通に生きたかっただけなんだ。




だけど、




恵まれてた。


そんなの、当たり前だって思ってた。


だから、失くした時、


哀しかった。


いっぱい泣いた。


かれてもまだ泣いてた。




ただ、ね。


抱きしめてほしかったんだと思う。


頑張ったね。


もう大丈夫だよ。


もうこんなもの持たなくても大丈夫だよ。




って、言ってほしかったんだと思う。




偽りでもかまわない。


縋ってしまうかもしれないけど、


薙ぎ払ってくれてかまわない。




刹那の暖かさを求めてたかった。


ゆっくり目を閉じて、


さらさらと頬を撫でていく温かい風を感じて、


そのまま眠りにつく。


だから貴方はそっと私の額を撫でて?


そして目を覚ました私に微笑んで?




私も精一杯の笑顔をプレゼントするから。









 +









夕暮れどきの伸びた影。


山吹色の空の彼方。


色褪せたセピア色。


座り込む少女。


――紅。




「まだ足りないね、」




少女はにやりと唇に嫌味な笑みを浮かばせていた。




「足りないよ、足りないよ、クオル」


フフ…と時折唇から零れる。


壊れたラジオのような印象。




「フフ…フフフハ、…ハハハハ、ハハッ!!」




声はやがて耳障りな雑音へと変わる。


しっかりと見開いた眼で彼女は紅を見下ろした。


瞳孔の開いた瞳。


踊り狂った人形。


すべてを終えた人形はまた新たな玩具を探し始めた。




「ねぇ、クオル――つまらないんだね、この世界って」




その指先が絡めたのはソード。


既に鋼の光沢はなく、一色に染め上げられている。


ソードの平面に少女は無様に笑いながら舌を押し当てる。




「ホント、つまらないや…。期待して損しちゃったよ」




ちゅ、という音を残して少女は口を離した。


唇についた甘いそれをゆっくりと味わう。




「もう、壊しちゃおうか…?ねぇ、どうおもう?クオル」




廻れ、


廻れ、


踊り狂え、


酔狂のワルツ


誰か一人が残るまで、


最後の一人が消えるまで、


廻れ、


廻れ、


踊り狂え、


最後の一人、




クレイジー・ドール









「じゃあ何で、泣いてるんだ?」














(その後に見せたあどけない素顔)(そっちが本心なんだろ?)
続きます
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