やっぱり君には笑顔が似合うね
「…お願い」
遠慮がちに微笑みながら差し伸べられたそれ。
は困ったように笑いながら二つの返事で了承した。
+
手の中に集めた翠色の髪を丁寧にブラシで梳いていく。
ほんの少し癖のある柔らかい髪。
ブラシが通る感触が心地よいのかティナは目を細めて笑んだ。
そのことに少なからず機嫌をよくする。
普段はアバウトなもこういうときには器用さを発揮する。
サイドに三つ編みをつくり下の髪を下ろすとゴムの変わりにリボンを使って、結い止める。
リボンはティナが差し出した真紅色。
翠の髪によく映える綺麗な色だ。
余った下の髪を軽く梳いたらツーサイドアップの完成だ。
「ありがとう…!!」
鏡に三つ編みを映しながらうっとりと頬を染める。
は散らかしたリボンらを
丁寧に集め、折りたたみ、しまいながら
うっすらと頬を緩めた。
たまにこうして髪を結ってあげるだけなのに、
彼女は至極嬉しそうな表情をしてくれる。
にとってそれは何よりも大事にしていきたいもののひとつ…
「今日はも結ってあげるわ」
「…僕?いいよ、別に…下ろしたままで…!」
「駄ー目。知ってるのよ?最近帽子の中に
髪の毛を入れちゃうのは…伸びてきたからなんでしょ?
ね、お願い?」
「………」
断る理由が何処に?
少しの思考の後の承諾。
にこにこと満面の笑みを浮かべたティナに
促され、イスに腰を下ろすと、帽子へと手をやった。
外すのと共に重力にしたがって下へと流れる桜色。
ほんのり淡く色づいて、癖なのか元からなのか…
肩につくほどに伸びた髪は、やんわりと波を打っていた。
「あ…あんまり派手なのはやだな…」
「ええ、わかってるわ」
任せておいて、と笑んだティナ。
掬い上げた髪を優しく櫛で梳くと、
意外にもそれはすんなりと通った。
さらさら…
さらさら…
「(……なんか、安心する…)」
感触を味わうように、は視界を閉ざした。
+
「ね、ホントに変じゃない?」
「大丈夫よ、」
そうかな…とはにかむ。
耳の下にゆるく結われた髪にはティナとお揃いの
赤いリボンが結ばれている。
前髪を軽くすくに、ティナはやっぱり笑顔で言った。
「やっぱり貴女には笑顔が似合うね」
(すこしずつでも…みんなの前で笑えるようになるといいわね)