足りない部分は君が埋めて














さん…そろそろ時間です」




開いた瞬間に感じるまぶたの重たさ。


だんだんとクリアに映る視界。


闇色の世界。




どうやら自分は眠っていたようだ。


あまりにも背中の壁に重心を持って行き過ぎていたせいで、


少しだけだが背中が痛む。




「ああ」




短く呟くと抱いていたソードを握り締めて立ち上がった。


さぁ、仕事だ。


リアルだ。


夢とは違うんだ。


区別しろ。


理解しろ。




受け入れろ―――




「貴方は…」




横切る瞬間に呟いたセリスの声には歩みを止めた。


振り返ることはしないが、意識は完全にそちらへと向いている。


セリスは一度俯き、ぽつりと小さい音量で言う。




「貴方は……貴方はいつまでこれを続ける気ですか?」


「…。さぁな、上からの命令だ。それは僕より上の奴らに……」


「そうじゃなくて…っ!」




声を荒げた後でセリスはしゅんとした様子で謝った。


はセリスをちらりと盗み見て、眼を閉じた。




「僕が大切な人を守れるようになるまで」


「………え?」


「二度は言わない。さぁ、お前も寝ろ。僕の任務が終り次第帝国に戻るぞ」




あいつらにもそう伝えておけ。


と親指で睡眠をとっている帝国兵たちを指しながらいう。


かすかに見えたの口元には笑み――




「おやすみ」




マントを翻し、は闇の中へと消える。


やがて完全に闇にまぎれたとき、セリスは眼を閉じた。




貴方に足りないもの。


それはきっと


欲望でも、


部下でも、


力でも、


権力でも、


ましてや強さでもなくて…









受け止めてくれるパートナーなんじゃないかしら…














(どうか私に頼ってください、貴方が壊れてしまう前に…) inserted by FC2 system