クオル














 うんと背伸びをしたら君を追い越せるかな?















「お疲れさん、」




漆黒の闇の中。


唯一の光源である焚き火にただただ視線を奪われている中、


背後からの声に意識をはっとさせる


振り返ろうとしたとき、人差し指で頬を押される。


ふに、と程好い痛みが頬に伝わる。


けれどものプライドのほうには衝撃的な程の痛みを伴った。


不機嫌に眉を寄せるを見て


彼は上機嫌に笑って見せた。




「ほら、飲めよ」




そういってほかほかと湯気立つマグカップを手渡す。


中にはブラウン色の甘い香りを漂わせる液体が注がれている。


暫く興味ありげに見ていた


クオルは「ミルクココアっていうんだぜ、」と助言した。




「うまいか?」


「熱い、」


「猫舌か?じゃあ冷ましてからだな」




そういってクオルはほぅ、とのココアに息をかけた。


湯気がクオルとは真逆のほうに揺れて時期に戻る。


二回目からはがやってみた。


軽く恐る恐るといった風にやったせいかクオルほど湯気は揺れない。


その様子を見てクオルは朗らかな笑い声を上げた。




「ホントに面白い奴だな、アンタ」




まるで真新しい玩具を差し出された時の子供のような反応。


新鮮なものが珍しく、不思議で、次第に好奇心によって動き出そうとする。


純粋に夢中になっているにただただクオルは


「面白い」といって微笑んだ。


反論しようとしたを頭を撫でることで制した。




「隊長はずるいですよね」


「何が…。……後、隊長じゃなくてクオルな」


「わかってて聞いてくるとかホントもう意地悪すぎです」


「はぁ?なんだそりゃ」




なんでもないです、


ふい、と視線をそらす


拗ねたか?とクオルがいったのですぐさまが否定の言葉を返した。


ふぅ、とため息をココアへとかけた。




「おいしいです、残念ながら」


「なんだ残念って……まぁいいが」


「今度また作ってください。気に入りました」


「………お前、俺のこと隊長だって思ってないだろ本当は、」


「そうですが?」


「…もういい、」




可愛くねー。


そうやって呟くクオル。


は小さなため息をして、


マグカップに口付けた。














(少し期待してみたくなる甘い自分)(そんな相手は遠い存在) inserted by FC2 system