雪のちココア















空一面に敷き詰めたかのような雲。


雪空。


吐く息は白い。


手先の感覚がなくなるほどの寒さを肌を感じながら、


一行はいつもより早く宿に入ることにした。





ちらちらと、雪が降り始めた。










 +










「風邪引くぞ」




背後からの馴染み深い声に、は振り返ることなく相槌をうつ。


意識が完全にそちらへと向いているのか、


の返事は曖昧のものだった。




彼女の視線をたどったそこには、一面の雪景色…




「へぇ…積もったのか。


 早めに切り上げて正解だったな」


「…そうだね」


「…………。綺麗だな」


「…うん」


「あんま俺の話聞いてないだろ」


「…………………………いや?」


「今の間は何だ」




ちょ、ちょっとだけ…


ほんの少しだけ訂正を入れたに、


ロックは呆れた風にため息をついた。




「とにかく中に入ろうぜ、雪なら明日でも見れるだろ?


 多分積もるだろうし…。…な?」


「もう少し、」


「…雪ならナルシェでも見ただろ」


「あの時は時間がなくてゆっくり見れなかったし…」


「そりゃ、まぁ…そうだけど………」





どうしたものか、とロック考え込む。


このまま、置いて自分だけ戻るという手もあるが


あいにくあたりは暗い。


時間もだいぶ遅いので一人をこの場所に残すのは気が引ける。


かといって、この寒さの中防寒具なしでいるのも風邪を引かせてくれといっているようなものだ。


暫く黙って考えていたロックだったが、名案を思いついたのか脳裏に“!”マークをちらつかせた。




「なぁ、…?」


「…何?……まだ戻らないぞ?」


「そっか………


 じゃあ折角作ってやろうと思ってたココアもお預けだな」


「戻ろう!!」


「(早…っ)…ょ、よし!」




ここまで上手くいくと思っていなかったのか、


ロックはの反応に驚いた風に言葉を紡いだ。


早々と立ち上がり、ロックを横切るは今まで以上に生き生きしているようにも見える…




「なにしてる、早く戻るぞ」


「お、おう…!」




なんとなく目に入った赤らんだの指。


雪降る夜にたった一人で。


一体どのくらいの時間あの場所にいたのだろうか…


自分が来なかったら、一体いつまであの場所に座り続けたのだろうか…




「(帰ったらしっかり暖めてやらないと…)」




ロックはいくらか前えを歩いているの手首を掴んで、


暖かい部屋の中へと入っていった。














[雪のちココア] 完
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