予知夢















息が詰まりそうなほど狭く感じる四角い空間。


小さな窓がひとつ。


光が差し込む。


そこから見える三日月が余計寒さを感じさせた。


冷たい。


目を閉じて、


また思うんだ。









あぁ、またあの夢か…って。









今までにも何度かあった。


私が帝国にいたときの夢。




暗くて、


冷たくて、


さびしくて。




黒いものがぐちゃぐちゃになる感じ。




そしてふと、視線を上げると当たり前のようにあの人がいる。




「なんだ、また来たのか?」


「酷い言い草。…来て欲しかったくせに」


「…」


「あら?図星?」




目の前の女性はフフ…と綺麗な笑顔で笑う。


自然な動作で私の隣に座るんだ。


…何度も見た同じ夢。


でもここからはいつも違う。


毎度。




「近々、あなたはティナって子とともにナルシェにいくわよ」


「…!」


「二人の兵が付き添いだけど…。その時あなたの人生が大きく変わるわ」


「馬鹿馬鹿しい…」


「まぁ、酷い。私の予想が外れた事なんてなかったでしょう?」


「…」




子供っぽく言う彼女には押し黙った。


隣にいる女性の表情は見えない。


唯一の光である月光の影がかかっているからだ。


でもなんとなく、雰囲気から彼女が笑っていると言う事がわかった。




…本当に不思議な人だとは思った。




この暗い夢に彼女が現れ始めたのは一年位前から。


こうやって度々現れては未来予想を私に残して去っていくのだ。


ただ、一年たった今でも彼女のことは名前すら知らなかった。




「…信じるよ」


「ありがとう、




嬉しい、と言う風に笑って彼女はまた微笑んでいるのだろう。


朝が近づくにつれて透けていく彼女の影を最後まで見つめて、


私はほう、と息を吐いた。




「さぁ、目覚めなさい。現実の世界へ」




その言葉を合図に夢から覚醒する。









「…信じるよ」









光が目の奥に射すのを感じて目覚める。


第一声はそんな言葉だった。




信じたい、彼女の言葉なら本当にそう思えるんだ。














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