The second















「ね、ロック。…ココア」


「俺はココアじゃない」


「「………」」




本日5度目のやり取り。


は眠いのか、暇なのか…ソファでぐったりとしている。


時々隣で本を読みふけてるロックにココアをねだってはみるものの、


全く相手にされてないといった感じだった。




「ツクッテクダサイ」


「嫌だね。自分で作れるだろ…?」


「ロックが作ったほうが何故か美味しいもん…」


「…作ってやろうと思ったけどやっぱやめた」


「…………」


「というかお前…自分で作るのが面倒なだけなんじゃ…」


「……………………………………」




図星か、と呟くように言うとは押し黙る。


確かに面倒なのも一理…


だが、彼に作ってもらったほうが…




「ロックが作ったココアは二番目に美味しいもん」




ソファーの背もたれに沈み込む


ふぅ…と息を吐き出すと、そのまま睡魔が引き寄せてくるから怖い。


ただいまの時刻は日付が変わって30分弱…


ロックはやや面倒くさそうに本のページを一枚めくった。




「じゃあ、一番目の人に作ってもらえよ」


「……………。わかっ、た」




投げやりに吐き出された言葉。


その言葉にはあっさりと引き下がる。


じゃあいいや、と簡単に諦め立ち上がりおやすみと言葉を紡いだ。


彼女のテンションは低い。




「おい、――」


「ちなみに、一番目の人ね…。母さんなんだ」


「――――」




ロックは目を見開き振り返った。


呟くように言ってドアノブに手をかけるの後姿は、


なんともいえないほど寂しげで…。


このまま消えてしまいそうなほど儚いものだった。


ロックは本を適当に放ると、傍に歩み寄り背後から抱きしめる。


小刻みに震える肩がを小さく思わせた。




「時々…さ。すっごく会いたくなるときがあるんだ…」


「…うん」


「わかってるよ…?ちゃんと…。だけどさ…」




細い糸を紡ぐような涙声。


ゆっくりとが振り返った。




「ロックの前だと私…っ。弱くなっちゃうね」




無理やりに作った笑顔。


頬に流れる雫。


ぬぐう事もしないで。




「いいんだ、別に弱くなったって…。俺がちゃんと受け止めてやる


 俺も…ごめん。全然気付かなくて…」




は何も言わずに首を横にふった。


ロックは悪くないよ、といいたいのだろうが、


邪魔者のせいで上手く伝える事ができないでいる。


ロックはそっと邪魔者…涙をぬぐった。




「いるか…?」


「……ら、ない」


「?」


「もう、ちょっと…」




このままがいい。


少ない言葉から、彼女の願いを推測する。


自分の前でも滅多に言わない我侭をロックは二つの返事で了承した。














(ちょっぴり強がりな女の子)(俺の前だけは弱くてもいいから)
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