戦う少女















触らないほうがいい。




朝起きて、おはようと言うときのような口調で淡々と言った


その声色は素っ気無く、思わず手を伸ばしかけていたロックは


「ん?」と動かしていた手を止めて、のほうへと振り返った。


はロックが手を伸ばしていたものを拾いに歩みながら、


これまたクールに言い放った。




「感電死したいって言うなら…止めないけど」




脅威のスピードでロックの手が引っ込められたと言うのは言うまでもなく…


は静かに息を吐くと地に刺さったままだったナイフに手を伸ばした。




―― ビリッ ―




「………ぃて…」


「………………」




やれやれといった風に回収したナイフからは、


さっき避雷針代わりに使用しサンダーを浴びせたさいの電力が残っていたらしく


乾いた音を立てての手を退けた。


…まさしく無駄な抵抗…


は相変わらずにナイフを抜き取る。


それをいくらか落ち着きある視線で見ることが出来るのはやはり慣れ…だろう。


ロックはそんな自分と、呑気にくるくると回している彼女に自嘲の笑みを浮かばせた。




「…慣れてんのな」


「…そうか?……まぁ、小さい頃はずっとこれだったから…」




ふぅ…とはため息をついてぴりぴりと痺れる左手を揉んだ。


自然な動きでやるそれは慣れが見えた。




「なぁ、」


「…何?」


「………………」


「聞いておいて黙るか…普通」


「いや…やっぱ聞いちゃ駄目なのかなって思って…」


「そうか、じゃあ聞くな」


「………………」


「………………聞きたいのか聞きたくないのかどっちだ」




押し黙るロックには不機嫌マークを頭につけながら突っ込む。




「いや…ほら。って剣もそうだったけどナイフもなかなか使い慣れてるよなぁって…」


「なんだ。そんなことか」


「(そんなことって……)」


「剣を使う前はナイフだったからな。剣は重い」


「………。まぁ、そうだな」




と、いうことは剣が重くてもてないような年齢からそんなものを持たされていたと…


自身、それが当たり前なものだと思っているのか時に嫌そうなそぶりは見せない。




「何している、ロック。早くしないとエドガー達に置いていかれてしまうぞ」


「…へいへい」




聞き分けのよいロックに躊躇する


肩にとん、と触れたロックの手がそれを阻止する。




「いつか、そんなものを握らなくてよくなるといいな」


「…?そういうものなのか?」


「そういうものなの」




ふぅん…静かに零したはほんの少しだけ口元に笑みを浮かばせた。




「そうだな…」














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