退屈なときには笑顔を















「何か用かな…?お嬢さん?」




ほんの少し表情を引きつらせた笑顔でたずねると、


目の前のお嬢さんは少し戸惑ってから「何も無いよ?」と


真顔で返してくれた。


そうか…と自分に言い聞かせるように呟くと、エドガーは手元にある一冊の本へと目を落とす。


先ほどと変わらないのはお嬢さん…がエドガーを、ガン見していること。


痺れを切らしたエドガーが尋ねるまで、尋ねた後もそれは続けられている。


じっと見つめられていることはどちらかというと苦手なほうではないエドガーも、


意味もわからず見つめられるのには抵抗があるようだ。




「読んでみるかい?」


「ううん…いい」


「そうか…」




短い会話。


こっちの気持ちなどにはお構いなしのようだ。


理由を問うと、




「読んだってわからないよ」




らしい。


…もっともだ。




エドガーが今目を通しているのはお得意の機械に関する書物。


久々にフィガロに帰還した今、コーリンゲンまでの合間の時間を使って、その本を読んでいるのだ。




そしてそこに暇を持て余していたらしいが部屋へと入ってくる。


入ってすぐエドガーの存在に気づいたかと思うと、


目の前のソファに座って、頬杖をしながらエドガーのことじっと観察し始めた。




そして冒頭にさかのぼる…




「エドガーは本当にマシーナリーだったんだね…」


「そうだが…。何、そんな凄いものじゃない」


「そうかな…?」




ふぅん、と小さく頷く


視線をくるりと回した彼女は「そんなことないと思うけどなぁ…」とでも思っているのだろう。


けれどもそれを暗黙のままで終わらせるのはらしい行動だと思う。




「………つまらなくないかい?」


「どうして?」


「それは………」


「エドガーは楽しくない?つまらない?」




言葉を詰まらせたエドガーには疑問の言葉を重ねる。


淡々と言ってのける


そのまま、続けた。




「僕ね、最近気がついたんだ。人ってね好きな事、や楽しい事してるときって笑顔になるの。


 夢中になりすぎて周りが見えなくなっちゃうくらいね。


 それでね、僕…みんなの笑顔を見てると嬉しくなるんだ…!」




変でしょ?


自分を小ばかにするような口調で言う。


唐突なことに何度か瞬いたエドガーは、次の瞬間ふっと笑む。









「君の好きな事は一体なんだい?」














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