ミエナ様に捧げます[11111Hitキリリク]
ミエナ様のみお持ちかえりOKです













 Sweet kiss like apple















「欲しいの?」




じっと物干しそうに見つめてくる純粋なまなざしに


は手の中のものを差し出した。


それは真っ赤に熟したリンゴだった。


ごくんと喉を鳴らしたところを見ると、


相当おなかがすいていたらしい。


征服者の消滅後、世界は平和に成ったものだと思われがちだが、


完全に平和を取り戻すにはまだまだ時間がかかるようだ。


はそのことを胸に刻むように眉をひそめ、悲しんだ。




世界に光を、


人々に恵みを、


罪なき子に加護を…




母の遺志を継ぐにとって、


誰かの苦しみこそが自分の苦しみなのだ。




「ゆっくり食べなさい」




果汁一滴さえもこぼさないようにむさぼりつく有様を見て、


はそっと頭を撫でた。


あまりにも必死なので、おいしい?とその子供に尋ねると、


子供は相変わらず林檎をむさぼりながら首を縦に振った。


ふふ…と小さく微笑みをこぼしたとき、


聞きしたんだ声が自分の名を呼んだ。


どうやらもう出発の時間らしい。


は子供にさよならをして立ち上がった。




「…っお姉ちゃん!」


「……ん?」


「これ、あげるよ」




林檎を飲み込み終えた子供が、


へと手を差し伸べた。


子供の前にしゃがみこむようにして視線を合わせると、


小さな手の中のものを覗き込んだ。


それは小さなビー玉だった。


深い青色をしたとてもきれいな…




「お母さんがくれたものなんだ。けど、あげる」


「……お母さんの、」


「林檎のお礼だよ」




はビー玉を受け取らずに、


逆に子供の手のひらに蓋をするようにして


彼に握らせた。


絶対に手放すものではないのだと、


これは自分が持っているべきなのだと…




「その気持ちだけで十分だよ。ありがとう…」




きょとんとする子供。


すこし残念そうに顔をゆがませたかと思うと、


気づいた次の瞬間には頬にやわらかい感触が感じられた。


驚いたふうに瞬きをする


子供はへへ…といたずらっぽく笑った。




「またね、お姉ちゃん」




片方にはビー玉。


そしてあいたもう一方の手のひらでに手を振った。


はやれやれと肩をすくめると、


手を振りかえしてロックの元へと歩みよった。









 +









「………何すねてんだよ」




さっきから一言も話さないロックには言う。


少しウンザリとしたところを見ると


原因は大体わかっているらしい。




「ロックにもらった林檎あげちゃったの怒ってるわけ?」


「…違う」


「じゃあ何?さっきの子供にキスされたこと?」


「…………」


「やきもち焼きめ」


「…………ほっとけ」




ふふ…と笑みをこぼす




「ね、ロック。ロックの分、半分こダメ?」


「やっぱり知ってたのかよ」


「あ、持ってるんだ。なんとなくだったんだけど…


 …ね、ダメ?」




覗き込むようにが言う。


無防備そうな表情で言う彼女は


無意識でそれをやってしまうからすごい。


勿論それをロックが断れるわけもなく。




「……………ほら」




差し出した手には赤く熟したりんご。


はにっこりと微笑みながら、


そのりんごに唇を近づけた。















(うまいか?)

(へへ…うん!………っ!)

(…。ホント、上手いな)

(―――ロック!?) inserted by FC2 system