(アウリエル)
いつかは枯れる日が来る
見つけた。
あぁ、
見つけてしまった。
サマサの村の隅の書庫。
そこにある本は自由に読んでいいという許可をもらったので
早速本が大好物といっても過言でもないと、
そんな兄についていくように一緒に書庫に来たは
この書庫に来て軽く一時間がたっていた。
というとさっさと読みたい―この書庫には魔導に関する本が多いが
が選んだのは幻獣界とこの世界についてのもの―本を手にとって
さっさと席について読み漁っている。
はが見ていた本棚のもっと奥の部屋にいって
あるものをさがしていた。
そして、冒頭に至るのだ。
表紙を見るに普通の本。
けれども僅かに帯びる魔力にの意識は止まったのだ。
試しに、と手のひらにわずかな魔力をためてスライドさせる。
すると『魔術書』と書かれていた文字の前に『禁術』と加えられて浮き出てきた。
態とだ。
悪用されないように細工をしていたのだ。
重要文書…ということには間違いないだろう。
そこでふわりと、ロックのことを思い出したのだ。
(ごめんなさい…)
そういって本をめくる。
そしてすぐにとあるワードの魔法を探し始める。
… 蘇生 …
彼女がいつの日か胸に抱き始めていたもの。
彼女を、どうにか――
蘇生の魔法が禁術とされているくらいにだって分かる。
生まれてからの五年間は幻獣界で育った彼女。
日常的に魔法の使用を目の当たりにする中で、母にも、
他の幻獣たちにも耳が痛くなるほど聞かされていることがあった。
それが“蘇生魔法”――
時の止まった生き物を蘇らせるなんて断罪だった。
それは人間であったの父、コーリンだって承知している事だった。
帝国へと引き渡されたとも様々な死に直面してきたが、
それだけは暗黙の了解で目を塞いでいた。
そのせいで大きな傷を背負ってしまったとしても、理(ことわり)なのであれば逆らえない。
(あった…)
そしてとうとう呪文を見つけてしまう。
複雑な詠唱ではあるが、問題はなさそうだった。
熱心に読みふける。
時間も忘れて必死に暗記を試みた。
「ぇ…ねぇ、…」
「…え?」
急に聞こえてきた兄の声にははっと動揺してしまった。
は「そろそろ出発するってさ」と呼びにきてくれたらしい。
は「う、うん…分かったよ」と尻込みしながらも本をしまい
さっさとその書室を抜け出した。
何かやましい事をしている子供のような素振りに疑問を思った兄だが、
の見ていた本の表紙をちらりと見ただけで特には追求をしなかった。
「どうしたんだろう…そんなに慌てて」
小首をかしげて、はの後を追った。
(今考えてみれば、わかる筈もなかったのだ)