Angel's smile
















“ 待ってて、すぐに助けるから ”――…















 幻獣と魔石 46.5
















ゆらゆらと揺らぐようなそれは、


漆黒の闇の中を紅蓮が踊っているようにも見える。


時々枯れ枝が弾く音がアクセントとなり、


ぼぉ…っとしていた意識が瞬時に取り戻された。


何を考えていたかなんていうまでもない。




「変わるぜ、…」




テントをめくり、中から出てきたのはマッシュだった。


彼の表情を焚き火の明かりが照らし、


それが今起きたばかりだと言わんばかりだったことに


は少し安堵した。




「…眠らないのか?」


「んー…いいや。何か考えことしてたら目が覚めてきた」


「そっか。…でも眠くなったら寝ろよ?」


「うん」




素直に頷いた彼女にマッシュは瞬きをして驚く。


「何?」と小首を傾げた彼女にマッシュは


首を横に振って何事もないことを示した。




ってさ、結構変わったよな…」


「え?…僕が?」


「あぁ、変わった。…雰囲気とか口調とか。


 よくわかんねーけど……変わった」




隣に座り焚き火からの暖を取る。


ぱち、


静かな空間に心地よいアクセント。




「へぇ…そうなんだ。自分じゃ気づかないもんだね…」


「ま、悪くはなってないけどな」


「はは…、どうも」




照れたように笑う


ずっとそうやって笑っていればいいのに、


という言葉はなんとなく飲み込んだ。




「コルツ山でマッシュに会った時さ、何かちょっと嬉しかったんだ…」


「…いきなりなんだよ」


「ん…。何となくだったんだけどね。


 それで僕も――…兄さんに会いたくなったんだ」




何でだろうね。


静かに呟いた




「兄さんって言うと…双子の?」


「うん、っていうんだ……って、セリスから聞いてるんだっけ?」


「…あー…少しな」


「別にいいけどね。気にしてないし」




双子の兄さん…


今は帝国に在中。


そして、の最後の肉親…




「僕たちすっごく似てるんだよ?あ、性格とかは違うらしいけどね」


「へぇ…」


「多分マッシュも見間違えると思う」




けらけらと彼女は至極楽しそうにしている。


おそらく、だまされている時の彼等の表情を思い浮かべて


そしてそれが面白くて仕方がないのだろう。


からかい癖は健在だった。


そしてそれはが安心している証拠。




「僕たち以外に初めて双子だったからだよ」


「?」


「嬉しかった理由。多分だけどね」


「…光栄」




優しく口の端を持ち上げてマッシュはの頭を撫でた。


ぽんぽん、と軽くたたくようなそれに彼女はさらに嬉しそうにした。




「……なんだか眠くなってき。…先寝てもいいかな?」


「あぁ、お休み」


「うんお休み。話し聞いてくれてありがと」


「おー」




軽く手を振ってテントの中へと体をもぐりこませる。


毛布を手繰り寄せて適当に被ると


自然に逆らうことなく瞼を閉じる。


瞼の裏に焼きついているのはの姿だった。




「(もうすぐだ…もうすぐ……)」




君に会える









“ 待ってて、すぐに助けるから ”














あとがき

久々の閑話ー

前の分でゾゾ編が終了して、
こんかいのがジドールまでのフィールドでの出来事です
いやいや、マッシュとか他のメンバーの絡みが少ないと思いましてね
ロックばっかじゃまずいかなと(そっちのほうが好きだけど)
じょじょに他の仲間たちとも交流させていきたいっ!(キラリ)

冒頭と最後の言葉はナルシェの辺りでラファエルが言ったものですよー
inserted by FC2 system