Angel's smile
















我等魔封師、この地に再びはせ参じる時




汝等に言葉を刻もう――…















 魔を封ずる者 70.5














急ぎの中にこそ休息を。


バナンは言って丸1日を全員は休息にあてることにした。


実は完全に消えたわけではない腹部の痛みや、


まだ補いきれていない魔力を癒す時間。


それは今のにとって貴重なものだった。




「聞きたそうだね」




暖炉の近くのイスに座っていた


自分に向かっている視線を背中に感じて切り出した。


ティナがいいの?と尋ねてくる。


は乾いた笑みを浮かべながら「いいよ」と肯定した。


最初に切り出した時点で、質問の内容なんて知ってる。




「魔封師のことだろ」


「…ええ」


「うーん、どっから話そうかな」




思考を捻る。


そしてその沈黙が躊躇いに取れたのかその部屋にいた仲間達はダンマリした。


そんな全員には「そんなシンミリするようなネタじゃないんだけど」


と小さく溜息をついた。




「魔封師ってのは…まぁ、簡単に言えば“ 魔を封ずる者 ”…」


「魔…?魔法のこと?」


「そう。その名の通り魔法を封じる人のことなんだけど、


 封じられるのは勿論魔法だけじゃない。


 時間とか、あとは記憶とか…?」


「(記憶、)」




あんまり詳しくはしらないんだけど


は目を伏せる。




「魔法とおんなじ感覚で使えるけど、やっぱり重みが違うかな。


 …だから、魔封壁にかけられた封印を解くのは、僕じゃないといけないけど


 僕だけじゃ、きっと開いたって説得できない……」




ティナの力がいる。


ぐ、と握り締めた手のひら。


それに歩み寄ってきっティナが自分の手も重ねる。


ゆっくりと微笑んだ。




は…?」


「いや、兄さんは違った…はず。あんまり自信はないんだけど


 父さんが言うには魔封師は大抵その血を継ぐ一人に伝承されるらしいから」


「??お父さんは魔封師?」


「って、言ってた」




小さな頃の父親の言葉。


にこにこと微笑んで言った、数少ない言葉。


少ないといっても、僕が覚えてないだけなんだけど。




「多分、死ぬ…時……?僕のほうに移したんだよ」




その時の記憶なんて、とっくになかった。


きっと最後の力でお父さんが封印してくれたんだと、思う。


確証はないけど。


そしてその封印はキッカケと同時に解けるようになっていた。


感情の芽生え。


ゾゾの、ビルでのあの瞬間……


静かな空気を換えるようにはパン、と手を叩いた。




「兎に角、今魔封師はこの僕しかいないわけ。


 そんでもって幻獣と和解ができる可能性があるのはティナ……


 それに、勿論みんなの協力もいる


 だから……え、えっと…」




最後の最後で尻ごもり。


あれ?


ついには自分の言葉さえ見失ってしまう。




「つまりは、今回の間封壁の件は皆で力を合わせよう…だろ?」


「そ!それが言いたかったの!」




言いよどんでいたの表情が明るくなる。


ホッとしたような雰囲気にいつしかその場も和気藹々としていた。




「…」




腕を組んでもたれかかる。


少し離れて彼女を見やる。


そして静かに部屋を出て行った。




少し離れていく感じがした。









 +









「みっけた」




ナルシェの隅のほうに位置する倉庫部屋。


そこにはたくさんの宝物が収集されており、


村長の気遣いから自由に使ってよいと言われてこうしてロックはここに来たのだ。


…もっとも。


ロックの腕前ならこれくらいの開錠は朝飯前だが。




「うわ、初めて現場目撃してしまった……」


「現場ってなんだよ現場って。……っと!」


「…!」




ロックが部屋の奥にあった宝箱にも手を伸ばそうとしているときだった。


人影が見えて思わず一歩退いた。


そこに居たのは狼だった。




「おいらはこそどろ一匹オオカミ、お宝はちょうだいしたぜ!」


「ね、ロック。泥棒って自ら名乗っちゃっても大丈夫なわけ?」


「いやまずいだろ。というより何で俺に聞くんだ!」




真顔で突っ込んだ


それを冷静にロックが流して、高い窓から逃げた狼を追うぞ、と促した。









 +









狼を追って二人は炭鉱を抜けて雪山へといった。


ここはかつてティナと離れた場所でもあり、幻獣がおかれていた場所だった。


渋い顔をしながらもつり橋を渡りきり、とうとう狼を追い詰めた。


けれどそいつの腕にはあるものが抱えられていた。


モーグリだ。


しかも片手にはナイフがあって、その刃先はモーグリへと向いている。




「動くな!動くとこいつの命は――」




… ブリザラ …




「クポー!!」




言い終える前にの発した魔法によって


カチンコチンに氷結した。


いきなりの魔法に驚いたモーグリが縋るような勢いでに抱きついた。


ロックが狼を哀れな目で見ていた。


ぼそりと、脅迫はまずかったな。とダメ出しをしていた。




「(でもま、これは貰っていくぜ)」




とちゃっかし雪の上に無造作に落ちていたものをすっと摘み上げた。


そしてふと思い出す。


狼がナイフを突きつけたときのの表情。


それはなんとも言えないほどいらだっているように見えた。


冷めたものを見るような残酷な瞳。




「ありがとうクポー!」


「いや、別に………ってあれ?」


「喋れるのか!?」




ロックがに抱っこされたままのモーグリ…クポを


軽く引き剥がしながら驚く。


けれどもそれを逆らうように必死にしがみつきながらクポは


ラムウに教えてもらった、と得意げに言った。




「夢にでてきたじいちゃんが、あんちゃんたちの仲間になれって言ったクポ!


 だから…ぼくも…仲間クポ!」




こうしてまた一人、仲間が増えたのでした。









「………」ふかふか


「………」


「………」ふかふかふかふか


「………(あ、照れてるのか)」














あとがき

閑話ですね。

狼のお話が番外編っぽくなっちゃいました。
ゲームじゃ結構面白いところですよね?
↑いつもクポより金の髪飾りを優先していた人。

この後クポをみたティナがモーグリを占領しちゃう
という小ねたがあります。
多分二人ともかわいいものには目がないはず!

ということでぱちぱちお願いします。
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