(エドワード)















  「ほらこれ、おまえの分」















夕暮れ時の帰り道。


橙の空に紫がかっていく。


薄く雲が延びていて、千切れそうなほどそれは細くて。


思わずは眉をひそめてしまう。




「(少し遅くなってしまいましたわ…)」




原因は大佐と話し込んでいたから。


本当は書類提出で軍によった時にリザ少尉と偶然出会い、


休憩時間間で待ってくれたらお茶でもしない?と誘われ、


5分後にリザ少尉と紅茶の美味しいらしいカフェに行って、


そこに偶然いたロイ大佐に偶然出くわし、


三人で少し話していて、リザがロイを「さ、時間ですよ、大佐」と


服を引っ張り引きずるようにして別れたのが今さっきだ。




せめて途中で電話くらい入れておけばよかったなぁと思う反面、


それならば宿の番号きいとけばよかったな、と少しだけ後悔する。


その次に人間が考えるものは「言い訳」で


は思考を錯誤させていた。


数秒考えて、やはり聞かれれば正直にはなそうと決意した。


隠し事はあまりいい気分ではない。




「(怒ってらっしゃらないかしら…)」




ほう、と溜息をついてドアノブを捻る。


やけに静かな室内。


それは思わず部屋を間違えたかと心配になるほど。




「エドワード…さん?」




そういって見るものの返事はない。


部屋を探るも室内は暗くてよくは見えない。


明かりがついていない。


は小首をかしげながら歩みを進める。


そして何となくほう、とあかりがついている場所へと向かった。




「……」




ぽう…と暖かな灯火の麓、


テーブルに頬をくっつけるようにして眠ってしまっているエドワード。


すうすうと静かな寝息を立てている。


そしてその近くには封の切られていない洋菓子。


の視線は止まってしまった。




「(帰りを待っていてくださったのですね)」




悪いことをしたな。


は苦笑しながら反省する。


それから静かにエドワードのおむかえに座ると、


肘杖をついて寝顔を覗き込んだ。


エドワードが起きるその時まで、今度は私が待っていよう、と。


そしてわざわざ買って待っていてくれた彼に


ただいま、を言おう。


きっと彼は微笑みながらお帰りと返してくれるだろう。




「(早く起きないかなぁ…)」




そのことを考えると少し楽しみな気がしてきた。














(2009/05/02) inserted by FC2 system