(20,000Hitリクエストありがとうございました!)
リクエスト「長編主とシカマルでほのぼの話」




(笑顔)









 ナデシコ










「え~僕には難題すぎぃ。シカマルが決めてよおー」


机に突っ伏すようにして唇を尖らせる幼馴染に、ぶっきら棒な彼は容赦なく「バカかそれじゃあ意味ねぇだろ」と一蹴する。

その反応を受けてさらに不満そうに口を尖らせるに負けじとシカマルも盛大に息を吐いた。


「そんな難しいこと言ってねえだろ」

「超むずいよー。えー世間一般の女の子って何欲しがるの??」

「面倒くせぇな。俺が知るかよ」

「じゃあ僕がわかるはずないじゃんかー!」


表情豊かな彼女はより一層八の字眉毛の角度を厳しくして目をくるりと回した。

今のこの駄々をこねる様子だけを見ると本当にこいつは忍びか、と疑いたくなる。

ナルトも顔に出やすいタイプだがも相当だ。

ぶす…と仏頂面で拗ねて見せる目の前の幼馴染に「可愛くねえぞ」と辛辣の言葉を投げると、流石に不服だったらしく腹パンが飛んできた。


「あんだよ。誕生日何が欲しいか聞いてるだけだろうがよ」

「だーかーらー特にないんだってばー。シカが考えてよー」

「200通り考えてもこれっつうのがなかったんだよ!」


策士を困らせる程のマイペース人間は物欲も皆無に近い。

食べたい時に食べ、寝たいときに寝る、といった具合の彼女が欲しがるものなんて浮かばなかった。

唇を尖らせてシカマルをじっと見つめてみても何か浮かぶはずもなく、時間だけが過ぎていく。


「ほら、なんかあるだろ。行きたいとこーとか、やってみたい事ー的な」

「うーん。そうだなぁ」


クッションを抱き込んでごろごろしていた彼女がばっと起き上がる。

何かひらめいたらしい彼女は先程とは打って変わってきらきらとした目でこう言い放った。


「じゃあさ、僕とデートしてよ!」




 +




彼女の誕生日の時期と同じくして木の葉の里では祭りが開催される。

普段見かける町には露店が並び、中忍試験の時同様太陽も高いうちから飲んだくれがそこら中に発生する。

他国からの観光客も増え、里全体はさらに活気づいていく。


…はずだった。


運悪く天候に恵まれず雨天の為中止。

さらには追い打ちをかけるように延期ではなく今年度は見送ろうという決断になってしまったのは不運としか言いようがなかった。


(せっかく色々考えてきたのによぉ)


不貞腐れたくもなる。

流れてしまったデートプランたちを思いシカマルは落胆した。

まさか彼女の口から“デート”なんてワードが出てくるとは思わなかった。

忍びながらも思春期まっさだ中のとシカマル。

そう言った類に興味がないとばかり思っていたが、ちゃんとそう言ったものにも関心があることだけでもわかってよかったというかなんというか。


ー、あがるぞ」


奈良家との家は割と近い位置にある。

幼馴染とはいえ一応は女の子の住む家。

親しき中にも礼儀ありだと、傘を折りたたみながら玄関先で待っていると廊下の奥からぺたぺたとはだしで駆ける音。

襖をあけひょっこりと覗き込んだその姿に知っていながらも固まってしまった。


「おっ、ちゃんと着てくれてる」

「祭りもねぇのに浮かれてるみたいでキツかったんだけど」

「ありゃりゃ、私がお邪魔した方がよかったかな?」

「ま、この雨の中その姿で歩かせる方が怖ぇからいいけどよ」

「ならよかった!こういう時家が近くでよかったなーって思うよねぇ」


間の抜けたようなのんびりの声色は相変わらずだが、明らかにいつもとは雰囲気が違う。

それもそのはずお互いに身に付けているのは本日着る予定だった浴衣。

シカマルの方は紺の布地に縦ストライプの浴衣で、の方がどこから引っ張り出してきたのか黒地に彼女の瞳の色と同じ赤のナデシコの柄の浴衣。

きっと子どもじみた暖色系を予想してきてみると、意外にもその大人っぽい色柄がちょっとした所作に合っていてドキドキしてしまった。

短い黒髪も丁寧に編み込んでいたり、普段は全くすることのない赤いリップをしていたりと普段とは違う装いだが、それを違和感に感じさせないくらいに似合っていてついつい口元がだらしくなる。

爪先から髪先までじっと目に焼き付けると、流石のも「恥ずかしいなぁもう」と頬を赤らめた。


「つかお前、埋め合わせがこんなんでよかったのかよ」

「うん!シカもいつもと雰囲気違ってかっこいいし、なんかお得な感じ」

「…そーかよ」


こういう時感情に素直な彼女が羨ましいと思う。

彼女は始終ニコニコとしながら「わーいお家デートだねぇ」とシカマルの手を引いて中へと招きいれる。

雨はうんざりだし、浴衣を着てその中で歩くのは結構堪えたが、ご機嫌な浴衣姿の彼女が見れるなら悪くないなと思った自分は単純なのかもしれない。


「お腹のすきはどう?沢山作ったんだ!シカの好きなサバの味噌煮とね、蕗のおひたしとね、きんぴらとね、澄まし汁とね…」

「食う。ってかお前張り切りすぎ」

「そりゃあデートだもん、頑張っちゃうよー!」

「…。あ、ちょっと待て」


元を辿れば彼女の誕生日祝いの為のデートだったはずだと彼女を呼び止めると、彼女はくるりと振り返り「なぁに」と首をかしげる。

色々心の準備というものがあったが、意を決するなら早いうちがいいだろうとシカマルは彼女に一歩つめより、編み込まれた彼女の髪に手を伸ばした。


(あんまじっと見るなよ)


それでなくとも化粧と浴衣の雰囲気で沸騰寸前だというのに、うちはとはまた違うガラス玉のような真紅がじっと自分を見上げる。

緊張しながらもなんとか、店の前で小一時間悩んで手に入れた蝶の形のかんざしを差し込むことに成功するとその加わった重みにはぱっと表情を明るくした。


「わ、わわ!ありがとう、シカマル」

「ん。まぁ、そのなんだ…似合ってる、んじゃねーの?」

「本当?嬉しい、大事にするね」


渡すまでは正直不安で仕方なかったがいざ付けてみると見立てどおりよく似合っていた。


「またデートしようね」


デートの本当の意味をこいつはちゃんとわかっているのか、と問いただしたくもなったが今日のところはご機嫌な彼女に免じて「そうだな」と返すことにする。














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