(吹雪)snowdrop番外編(白昼夢)・再投稿














 Daydream














「見える」だなんて言ったらいったいどれくらいの人がそう意味だって思うのだろう。


見えるなんて表現は正しくないか。実際くっきりと見えてるわけじゃないし。


正しくは「感じる」ってだけ。それも感覚が研ぎ澄まされている時だけのこと。


まるで風が自分の中まですりぬけていくような内側からあふれ出す何かが


渦を巻いて舞い上がるのを感じた頃、それを感じることができる。


この話で気づいた人もいるだろうけど「それ」を。


いないって信じている人には何も見えない。


だっていないものを想像することはできないから。


昔読んだ小説に似てたこと書いてあったかも。確か…の鳴くころに。なんだったかな。


まぁ人間見えないものを崇拝してる習慣もあるくらいだし、いたっていいと思う。


そりゃあ私なんか、まわりに笑われてしまうこともあったけど「いる」って信じてる。


というより実際、そばに感じることができる。


この感覚が大人になるにつれて薄れていってるのも事実。


いつかは見えなくなる時も来るかもしれないと思うと、少し、寂しいのかも。うーん。




「…、」


「ん?どうしたんだ?ぼんやりして」




冒頭に戻るけど。練習合間の水分補給。


すうっと細胞一つ一つが活性化して養分が吸収していくのを感じていた時、


ふと、感じた。五感を集中させて更に強く意識した時、ぼんやりと見えた。それが。


ちょっと嫌味っぽい言い方してるかもしれないけど別に嫌ってるわけじゃないの。


そりゃあ初めは周りもできると思ってたからイレギュラーだなんて気づいたときは


それなりに驚いたけど…。でも、嫌いじゃ、ないの。


幽霊さんだけじゃなくて妖精さんや精霊さんの存在も肌薄だけど感じることができる。


風を感じて、空気を震わせて、太陽の匂いを身にまとう。


ボールはそれに合わせて一緒に踊ってくれる。それが私のサッカー。


って、普通の人から見たら唯の電波っこなだけなんだろうけどね。




「…」




キャプテンの言葉に私は二つの意味でだんまりする。


ひとつ、唯のトラウマ。自分の声、言葉、気持ちのせいで不愉快な気持ちにさせないだろうか。


ふたつ、「みえる」なんて言って驚かせたり、ひかれたりしないだろうか。


円堂くんは言うか言うまいかで悶絶中の私の雰囲気を悟ったのかボールを片手に


ニッと笑って言葉を待っていた。あ、士郎君に言われてたんたっけ。「待っててあげて」って。


せ、せめて言葉を選んでオブラートに…えーっと、えっと……。




「誰、か…いる気がしたの……」




ドストレートすぎじゃん私。


ホント滅多に話なんてしないせいで言葉選びへたくそなんだから…!


は発信してしまった言葉が戻ってくればいいのに、


なんてどうしようもない夢を見つつ内心で頭を抱えた。


ああああ。心の声さえも漏れてしまいそうだ。




「おい!そろそろ練習に戻っ――ぐは」


「…!?」




背中に投げられた染岡くんの声。ハッと振り返るとそこにはニッコリ笑顔の士郎君。


あれ?と脳裏に疑問符をいっぱい浮かばせる。ちらりと士郎君の奥を見ようとした時


その視線に合わせて士郎君が動いたので、つまりは…そういうことなのだろう。哀れ、染岡君。


じと…と士郎君を見上げると全く悪びれてない様子で笑顔で小首をかしげていた。もう…。




「さ、練習にもどろっか。さっきの技のコツ、なんとなく掴めてきたと思うんだ」




後ろ髪ひかれながらもうんと頷く。走って皆(一人除外)の待つグラウンドへと走った。


同じように走ってるのにぐいぐいと二人の距離が広がる。追いつこうと少しだけ力を加える。


頬を風がすり抜けて行った時――あ。




赤い髪。白いマフラー。幼少期の士郎君と瓜二つの――アツヤ君。


目を大きく開いた。アツヤ君はそれに気がついたのかふと振り返って


唇の前に人差し指を当てた。…わかってるよ。




“約束だよ”




でしょ。言わないよ。大丈夫。














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