本日は晴天なり
















ゆっくりとした足取りでミゲールの町を歩く。


手をつないで、


二人で。




ミゲールの昼下がり。


チェスターとは久しぶりの散歩を満喫していた。


再建がすんで間もないミゲールの町にはほとんどといっていいほど何もない。


ただ、人の住める家が数件と宿がひとつ…そしてレニオス教会があるくらいだ。


全体が村から町へ変わろうとしていた。




が嬉しそうにはにかむ。




「ん?どうした?」


「ぇへへ…。懐かしいなって、思って…」


「そうだな」


「昔はよく、一緒にお散歩した…よね?」


「…そうだな」




彼の返答が単調になってきていることに気付いて、ははっとなる。


…も、もしかして言っちゃダメだったのかな…???


慌てた様子で謝罪の言葉を述べる


握っていた掌をぎゅっと握って、精一杯といった感じだった。


そして彼女の意図を読み取り「あー違う違う…」とチェスターは否定する。


これぞ長年の経験が物をいうのだ。




「色々思い出してただけだよ」




早とちり、と付け加えてチェスターは彼女の額を指でつついた。


けらけらと笑うチェスターには恥ずかしげにほんの少し唇を尖らせる。


いつしか二人はベンチに腰を下ろしていた。


手は繋がれたまま。




「そういや、初めてしたのもこの場所だったなって…」


「…ハジメテって?」


「さぁ、何でしょう」




からかい口調でそういうチェスターに小首をかしげる


疑問のまなざしを向けてくる彼女にチェスターはそっと手を伸ばした。


温かい掌を躊躇いながらも拒む事はなく、


はされるがままだ。


嬉しそうに目を細める彼女。


チェスターの指先が唇に触れて思わずどきりとした。


親指の腹が彼女の唇をなぞる。


彼の指していた“初めて”に気付いて、恥ずかしそうに顔を俯かせた。







「…ぅん」




唇から離れたチェスターの手がそのまま頬まで伝っていく。


いつもの愛称ではなく名前を呼ばれて、は視線を上へと上げた。


一瞬視線が交わってどちらともなくキスをする。




手に力を入れると彼は優しく包み返してくれた。














「お腹すいたな…」


「ぁ、何か食べたいもの、ある?」


「んじゃ、


「…。そっか、そっか…じゃあ玉ねぎ入りパスタで…」


「やめろー!!!」














[本日は晴天なり] 完
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