「…ぁ」
ほんの少しの雨のにおいを鼻に感じて、
窓際へ行って確認するとポツリ、ポツリと雨が窓をたたいた。
それがだんだんと大きく、早くなっていくのを見て、
は何かを思いついたのか、早々と部屋の奥へと戻っていった。
雨降りの日
ぽたり…
ぽたり…と青年の持つ青みの帯びたグレイの髪から水滴が落ちる。
髪だけではなく、全身びっしょりと水にぬれていて、青年…もといチェスターはぶるっ!と身震いをした。
チェスターは手に持っていた弓一式を床に置いて、
心配そうな表情をしながら近づいてくるに「ただいま」と声をかけた。
「…ぁ、チェスターのお兄ちゃん…お帰りなさい」
「これ、つかって…くだ、さい」と渡されていたのは白くて、乾いたタオル。
おそらく、彼がびしょびしょにぬれて帰ってくることを予想して、
あらかじめ用意していたのだろう。
チェスターはそれを受け取って、フ…と微笑んだ。
「気が利くな…、サンキュ」
「あ…、お風呂沸かしてある…から、先入って…」
か、風邪引ぃちゃう、から…と、
はつぶやくような小音量で呟く。
最後のほうになるにつれて声が小さくなるのはの癖みたいなものだった。
「ん…、あ!」
「ぇ?」
ぽん、とタオルで拭いたばかりの手のひらをの頭の上へおいた。
そして、吐息がかかるまで顔を近づけて…
「いつも、ありがとう」
そういって俺はの額にキスを落とした。
(雨の日も捨てたもんじゃねーな)(そ、そうなの…?)(そうなの)