カランカラン・・・


と、扉についているベルの音が聞こえてきて、


は作業を一旦やめて




「あ…、いらっしゃい、ませ…」




と以前ゴーリに習ったとおりにお客様を見ながらいう。


店の入り口にいたのは




菫色の髪のかわいらしい女の子だった。















 アミィの日















「じゃあ、あなたが噂のさん?」




友好的な視線を向けながら、少女…アミィは微笑む。


も『噂の』という単語に内心小首を傾げるが、はにかむように笑ってる。


歳が近いだけあってか、二人の話は盛り上がりを見せていた。




、でいいょ…、みんな…そう呼ぶ、の」


「じゃあ私のことも“アミィ”って呼んでいいからね…!」


「ぅん!」




私たち、きっといいお友達になれるかもね。


アミィはご機嫌にそういって、先ほどが出したカップに口付ける。


緊張の第一口目に、は控えめに「美味しい?」と尋ねた。




「うん、すっごく美味しいよ」


「そ、そう…よかった…、です」


「ふふ…本当よ?」




上目遣いで、首をかしげるというオプションに菫色の髪がさらさらとゆれた。


…?


この感じって……




「ぁ、の…。前に会ったことって、ある?」


「え?…ないと思うけど…。どうして?」


「ぇと…。なんで、だろ…」




再度、アミィの顔を見つめて首をかしげる。


ただ、何のなくそんな気がするだけの適当という名の勘だということができず、


結局いつもどおりに不安定な言葉になってしまう


完全にが言葉に詰まってしまったそのとき、


そのタイミングを見逆らったのかというタイミングで、配達の終えたチェスターが帰ってきた。


チェスターはその青い瞳に二人を映して、あからさまにいやそうな顔をする。


一瞬の間のあと、チェスターはのほうに話しかける。




「……………………親父は?」


「ぁ、ミゲールさんの…ところに行かれて、ます…。


 配達、終わったら…、あがっていいそう、です」


「ん…。




 ………………………………………で?」


「なによ、その態度の差は」




が配達の料金の店の奥にしまいにいくのを見逆らって、


キッと半ば呆れたようにチェスターはアミィをにらんだ。


アミィも負けじと睨み返す。


ばちっ!と火花が飛び散るようなにらみ合いに、


先に折れたのはチェスターの方だった。




「はぁ…、で?何の用だよ」


「村一番の美少女がお兄ちゃんと一緒の店で働いてるって聞いてね、ちょっとお兄ちゃんを見張りに…」


「ったく……そんな情報何処で仕入れてくるんだか…」


「村じゃ結構有名なんだから…。初めて会ったけど…、やっぱり噂どおりに可愛い!」


「………………それはそれは…」




「ねー」と、アミィは戻ってきたばかりで事情の知らないに話を振った。


話は読めなかったが、とりあえずそうしておこうといった雰囲気で、


はアミィの話に頷いた。




「いや…、そこ頷くところじゃねーから…」


「ぇ?」


「もーお兄ちゃん!そんな風に言わないの!」


「お、お兄…???」


「なんだ…言ってなかったのかよ…」




面倒くさそうにチェスターはため息をついた。


そして、親指でくぃっとアミィをさしながら「そ、こいつ俺の妹」とに伝える。


それを聞いたは左手に右のこぶしを打ちつけるようにして相槌を打った。


…理解したようだ。




「(そういえば、なんとなく似てる…かな?)」





声には出さず内心そうつぶやいて、はにかむ。


最後の一口を飲み終えたアミィがふふ…と微笑んで、席を立った。




「ご馳走様、。明日も飲みに来ていい?」


「…うん。来てほしぃ…です」


「二度とくるな」


「じゃあまた明日ね!…お兄ちゃん、の邪魔しちゃ駄目よ?」


「(無視かよ…)お前に言われなくても分かってるよ」





またねーと明るい声色で手を振るアミィに、その姿が見えなくなるまで振り返す


チェスターは仕事終わりのコーヒーを飲みながら、


を盗み見た。




「…ぁ、仲…いいんですね」


「そうかぁ…?(今は仕事中じゃねーから、敬語じゃなくてもいいぞ?)」


「(ぁ、は…)ぅん…。ちょっと、羨ましい…かも」


「ふーん」


「ぇへへ…」



アミィがさっきまで飲んでいた食器を律儀にも片付けながら、


自分の分のコーヒーも作って、チェスターの向かいに腰掛けた。




「美味いな、これ」


「あり、がと…」




ライバルは多そうだな…


の淹れたコーヒーを見つめながら、小さくつぶやいた。














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