キューピット(?)の日















「よ…喜ぶかなぁ…?」


「絶対、喜ぶって!」


「……………………う、ん」




アミィの説得に先に折れたのは何時もどおり、だった。


こくりと首を縦に振るその表情は赤い。


今さっき耳打ちされた言葉が頭の中を支配しているようだ。


何度も何度も頭の中で繰り返されているであろう言葉の、


いわば原因とも言えるアミィはくすりと笑みを零す。





「ほら…帰ってきた!」




アミィのその言葉とほぼ同時、


今回の獲物…もといチェスターは敷地(テリトリー)内へと足を踏み入れた。









 +









「おかえりっ!お兄ちゃん!!お仕事お疲様――――」




――――バタッ!




オプションにキラキラを纏わせたアミィが精一杯の笑顔で兄をおで迎えする。


だが、虚しくもチェスターはアミィが最後まで紡ぎ終わる前に、


自身が開けた扉を再び閉ざしたのだ。


双方にしばらくの沈黙が流れている。


チェスターのほうは一枚扉の向こうにいるせいでわからないが、


アミィは先ほどの笑みが消えていない。


はどこか怯えたようにその光景を見つめていた。




「お兄ちゃん、人の話は最後まで聞かなくちゃダメなのよ?…わかってる?」


『それとこれとは場合が違うんだよ…。後、その口調やめろ。…夢に出そうだ』


「ふふ…鍵して欲しい?」




ごつ、と扉の向こうから音がした。


おそらくチェスターが扉に頭をぶつけた音だろう。


次には落胆のため息が聞こえてきた。




「ア…アミィ、黒いよぉ…」


「平気よ、これくらい」


「(これって…)」


『んぁ?…そこにいるのか?』




いるよ、と返そうとしてはっとなる。




(えぇ?もしかしていちゃ、ダメだったのぉ???)




「バカ兄っ、が不安がっているじゃない!」


「………誰のせいだ」


「お兄ちゃん」


「…………」




自室でもある家に(何とかという表現が正しい)入り、


アミィの台詞に眉根を寄せ、怪訝そうな視線を送るチェスター。


暗黙した兄を尻目に笑いながらアミィは理由を告げる。




「…誕生日?誰の?」


「お兄ちゃんのに決まってるでしょ!折角プレゼントも用意したのに…」


「………。その発言は妹としてどうなんだ?」


「なに変な想像してるのよ」




目を細め、窺わしいような、忌々しいものを見るような視線を送るアミィ。


盛大にため息をついて見せてから、の背中をぐぐぅと押す。


背中を押されたは戸惑いながらもチェスターの前まで歩んだ。


えっと…と前置きをしてからは上目遣いでチェスターを見つめた。


そして…










「…ぉ、おかえりっ。………………………チェスター!」









「―――――!」




この距離でも聞こえるんじゃないと思うくらい高鳴る心臓。


もしかすると耳の辺りまで赤くなっているであろう顔。


カァ…と体温が上がっていくのがわかる。




双方の反応におおいに満足そうな笑みを浮かべながら、


アミィはチェスターに「感謝してね」と悪態をつく。




アミィがに伝達した言葉…


それは…









『名前で呼んであげて…?絶対喜ぶから!』














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