誕生の日















窓の外でちらちらと降り積もる雪たちはまるで、


季節を知らせているかのように一面真っ白で…


明日、積もったらいいな…


なんて…ぼんやりとした頭の隅で考える。


暖炉の方へ目線をやると、まさしくその場を独占しているリーフェの姿。


猫って暖かいところが好きなんだっけ…


ごろん…と寝返りを打つリーフェにふふ…と笑みをこぼす。


平日の午後…。


店番をしている中で一番客の多い時間。


だが、今日の天気は大雪。




「(サボっちゃおう、かな…)」




あまりの退屈さにふわぁ…と欠伸が出た。




そのとき外から、どんどん、と戸を叩く音が聞こえた。


リーフェの耳がピクリと反応する。


その音に、の飛ばされそうとしていた意識が戻された。




「(お客さんかな…)」




外は猛吹雪。


こんな寒い中物好きもいるんだな、と内心思い、戸に歩み寄る。


開かれた扉から覗いた冷たいかぜに、は目を細めた。


うっすらと開いた視界に映る人影。


それが自分の知っている人物だとわかるまで数秒足らず。




「…チェスターのお、お兄ちゃん!?」


……っ!」




冷機が入り込まないように早々と扉を閉めると、


は暖炉の前へとチェスターを引っ張った。


唸るように「寒ぃ…ッ!」と零すチェスターの手は悴んでいて冷たい。


不安げに眉根を寄せる彼女にチェスターは向かい合うように座りなおす。


そして、暫く暖炉の炎へと向けていた掌を彼女の髪へと伸ばした。




「…ひゃっ」


「悪ぃ…冷たかったか?」




ぎゅっと身を縮めるにチェスターは、


ちょっと我慢しろよ、と伝えてからもう片方の手でごそごそとポッケの中を探る。


何か取り出したかと思うと、に一歩ぶん近づいた。


息がかかるほどの距離では分けがわからずされるがまま。


視界の隅に映ったのは深緑色をした…


リボンだった。





「これで…よし!




 、誕生日おめでとう!」



「…ぇ???」




耳の下にひとつに纏められた髪には深緑色のリボン。


ふわふわとしたブラウンの髪によく似合っていた。


チェスターはにっと得意げに笑う。




「やっぱりな。この色が一番似合うと思ったんだ」


「…ぇ、選んで…くれたの?」


「まぁな。…お気に召されましたか…?」




くい、と口角を持ち上げると普段は使わない口調で尋ねた。


はにかみながら大きく首を縦に振る彼女に、




チェスターは頬を緩めた。














(今君がここにいてくれることに ありがとう)(ずっと俺の隣で笑ってろよ?)
inserted by FC2 system