Angel's smile
ドコで間違えてしまったんだろうね――…
欠陥者の抗い 62
しん。
鳥肌が立つほどに静まり返った世界。
は目を伏せて俯いた。
そして背中にいるセリスに静かに話しかける。
「馬鹿だね、セリス。僕のために、頑張らなくていいって言ったじゃん……」
そんなに傷だらけになって。
か細い声。
それでもよく通っていて、凛としている。
「無茶しないで、ってよく僕に言うくせに……ホント馬鹿」
「…さん……」
冷たさの中のぬくもり。
水の中に差す光。
ぽう、と灯る。
背を向けたまま、は立ち上がった。
「 ありがとう 」
歩み始める。
セリスとの距離が開く。
大切な人を戦わせる苦しみ。
とめられずにいる自分。
ずっと、追いかけ続けていた人物。
結局。
追い抜くことはできずに。
「( 悔しい、 )」
微力な自分。
傷口が傷む。
切り裂かれた痛みがじわじわと広がる。
セリスは苦痛に眉をひそめた。
+
「僕を、助けるだって…?」
目を大きく開けてが言い放った。
そして嘲笑気味にハハ、と笑う。
は治癒をやめて彼と向き合った。
「そう」
「ハ!バッカじゃないの…?
今まで一つでもが守り通してきたものなんてあった?
なかったよねぇ…!一個も!」
「………」
「父さんだって、母さんだって、仲間達だって…!!
ぜーんぶ見殺しにしてきたくせにぃ――!」
ギリ、と奥歯をきしませるロック。
追い討ちをかけるように次々にぶつけられる言葉の意味。
それは酷く残酷なものだった。
それを一番言ってはいけない人物が口にしている。
何の躊躇もなく。
その言葉の意味さえ知らずに。
取り返しもつかないような言葉を。
は目を伏せる。
杖を握る手に力が入る。
息が大分整ってきた。
すっとは再びを見据える。
迷いのない視線が揺れることなく向けられた。
はそれだけで押さえつけられたような圧迫感を感じた。
ぐ、と押し黙る。
「お喋りはもう終わった…?」
の瞳孔が狭くなったのと、
金属同士がぶつかり合う音がしたのは同時だった。
気づけば二人は研究所の中央で
一人は剣を、
一人は杖を握り、交えている。
互い同色の髪が揺れる。
褐色の瞳が、そらされることはない。
しっかりとお互いがお互いを見つめ、離さない。
キン、
金属同士が弾かれる。
いつの間にやら、の表情から笑みが消えてしまっていた。
「そんな物じゃ、僕は殺せない」
「殺すつもりなんてない」
“ 助ける ”という言葉の意味。
はそれを気にしている雰囲気だった。
そんな合間にも攻防が続く。
やや優勢に見えるのはやはりだった。
怪我というハンデを、元帝国兵としてのキャリアが補っているという感じだ。
それでもまだ劣ってしまうのは、男女という力の差――
「く、そ……」
セリスがエドガーの力を借りて何とか起き上がる。
それでもと交戦した時のダメージが
なかなか抜けずに四苦八苦している様子だった。
半ばもたれかかる様な状態でセリスは嘆くように吐き出す。
ロックも“レイヴ”をしまって、すぐさまセリスノ治癒に取り掛かった。
呪文を丁寧に詠唱し、唱える。
掌に小さな魔方陣ができて、すぐに光となって傷口に注いだ。
ケアル程度の魔法だったが、気休め程度にはなっただろう。
「なんか、さ」
治癒を終えたロックが呟いた。
視線は血を分けた肉親でもある兄妹へと戻される。
二人の容姿はそっくりだ。
見事なミラーツイン。
双生児。
今現在彼等を区別するには手にある武器を見るより方法はない。
もともと童顔な。
男女の体格の差も、よく見ないと解らないほど。
鏡に映したような存在。
唯一無二の存在。
ダカラ余計
「 悲しいよな…… 」
あとがき
62話です。
言ったつもりでいましたが、
服とか装備品とかの違いは勿論ありますよ。
過ごしてきた環境とか違うし。。
だけど、見分け方についてはノータッチで(汗
実際男女で違うんだから(二卵性だし)
体格とかで見分けつくと思うんですけどね(あんたがそれ言っちゃダメダロ
あえてそこもノータッチでbb
今回は補足のような話でした。