Angel's smile
夢の中で 君は 泣いていました――…
砂漠の城フィガロ 5
パチッ、という焚き火がはじける音にロックは眠りそうになった自分に鞭を打つ。
慌てて周りを見渡すが、辺りは静まり返りモンスターの気配もない。
ほっと胸をなでおろし、目の前でメラメラと燃える焚き火を見つめた。
+
ナルシェを出発してまもなく、日が傾き始めていることに気付くと
ロックは早めに休息を取ることを提案する。
今回の目的地に行くには砂漠を通らなくてはいけない。
砂漠地帯では夜中に気温が急激に低くなるため、
明日の朝早くまでこの草原で身体を休めようということだった。
そして、二人はそれに了承した…。
+
ロックは小さく伸びをすると、一足先にテントで休息を取っている二人のことを盗み見た。
一人は魔道の力を持つといわれる少女…ティナ。
がかけたのだろう、ローブを毛布の代わりにして、
横になって身体を休めている。
よっぽど安心しているのかすやすやと眠っていた。
そしてもう一人は、同じく魔導の力を持つ。
ティナとは正反対で、警戒しているのかソードの鞘を抱くように座って眠っている。
客観的に見ると、ティナを見張ってるようにも見えた。
否、見張る…というより守るといった表現の方が正しいのだろう。
ナルシェにいたときも、過保護なほどに気にかけていたような気もする…
それだけ、にとってティナという存在が大きいということなのだろうか…。
の唇がかすかに何かを呟いていることに気付いて、
ロックは興味本位でに忍び寄った。
「(…寝言、か?)」
近づいたおかげでよく見えるようになったの表情はお世辞にもいいものとはいえない。
ずっと無表情だった“彼”が今は、
苦しそうな表情をしている。
ロックはじっと耳を澄ませた。
「…っ…、…………たす……、ら……」
「?」
「…ま…って……すぐに、…………た…ける、から……」
―… 待ってて、すぐに助けるから …―
「!?」
バチッ、と焚き火がはじけた。
そのとき、音と、人の気配に気付いたがはっと目を開いた。
反射的にソードの柄へと手が伸びていたに、
ロックはかなり慌てた様子で俺だ、と(それでもティナを起こさないように気を配ってか小声で)呟いた。
その褐色の瞳にロックを焼き付けると、ほっとしたように息を吐き、緊張を解く。
はどこか冷静になりきれてないロックの口を手で塞いだ。
「(手が、冷たい…)」
「ティナが起きるだろ…静かにしろよ」
「…ゎ、悪い…」
「…お前も休めよ、見張りなら僕が代わってやる」
「…頼む」
「別にかまわない」
寝起きだというのに淡々とした口調では言った。
音を立てないように静かにテントを出ると、ソードを手の届くところにおいて
ゆっくりと振り返った。
そして、
「おやすみ」
呟くように言って、ゆっくりとテントのファスナーをおろした。
+
あれから2、3時間ほど経っただろうか…。
東の空に太陽が顔を出し、辺りを明るく照らした。
ジジジジ…とファスナーが開く音がしたのかと思えば、
まだ、ほんの少し眠そうなティナと目が合った。
「おはよう。よく…眠れたか?」
「…ええ。おはよう、…。早いのね」
まぁね、と口角を持ち上げるように笑って見せロックはまだ寝てるのかと尋ねる。
「ううん、起きてる」
「そっか」
朝の空気がひんやりと肌につめたい。
ティナが隣に座って、の肩に頭を置いた。
「…怖い?」
「がいてくれるから平気」
「…そっか」
大丈夫だよ。
そういって頭を撫でようと手を伸ばしたとき…
「よし、んじゃあ行くか!
…ってあれ?俺、何かしたか……?」
「空気読めよ、お前」
「はぁ…?」
「な、なんでもないの!…行きましょう!」
ずっしりと重くなった空気を誤魔化すようにティナは必死に話をそらした。
+
時は進んで、太陽が真上の位置に来るころ…
ジリジリという暑さの中、沈黙を破ったのがロックだった。
「ついたぜ、あそこがフィガロ城だ」
ティナとが顔を上げると今まで一面砂だらけだった視界にに大きな城が映る。
が一瞬眉根を寄せた。
僕は…ここに来たことがある――!
あとがき
第五話、更新です
このあたりくらいからネタを入れていきたいと思います