Angel's smile
少し…付き合ってみてもいいか――…
砂漠の城フィガロ 7
暫く二人の間を沈黙が流れる。
エドガーは何かを考えるように黙り込み、
といえば…にやりとした笑みでそれを見つめていた。
「残念ながら考えた事はないな」
「そりゃあ残念だ」
「…ティナはどうするつもりかね?」
「勿論おいてく」
冷静な口調で淡々とは言う。
エドガーは何かを探るようなまなざしを目の前の彼女へと向けた。
なぜ…?とエドガーが問う。
「理由なんてないさ。あえて言うなら…一人のほうが行動しやすいから、か…?」
「君にそれができるのか?」
「…?どういう意味だ?」
「先ほどのあの娘との対応を見る限りでは君にそんなことはできるはずがない…ということだよ」
「………。いい目をお持ちで」
あの王座の間でのティナとのやり取りをみていたのだろう。
一瞬でがティナを大切にしているのを見破った。
皮肉気味にがこぼす。
「どっちみち、強制的に僕は帝国へと送り返される。ナルシェでの任務が失敗したんだ…。
…そろそろ来るんじゃないか?」
「誰が…かな?」
「……………………“アイツ”…」
ぽつりとつぶやくように言う。
少し声のトーンも下がっている。
は固く唇を縛った。
「…。間違ってたら笑っていい…」
「なんだ?」
エドガーはそう前置きをおいてから自分の考えを話した。
その後に、これはただの推測にしか過ぎないと言う事も告げる。
「君は…ティナを庇っているのか?」
一瞬だったがエドガーの言葉には顔を歪ませる。
それをエドガーは見逃さない。
「図星…か」
「………ぜひとも理由をお聞かせ願いたい、な」
「なぁに、ちょっと考えればいい。簡単な事だよ」
の無に近い表情から肯定を読み取り、
エドガーは余裕気に口の端を持ち上げる。
エドガーはこう続けた。
以前会ったときもそうだったが…、君は“アイツ”に対してあまりいい印象を持っていないようだ。
帝国にも…心から忠誠を誓っているわけじゃない…。
ただ、そういう風に見せているだけ。
ここで、疑問が生まれる…。
“何故…?”
ここでエドガーは一区切りをおく。
は何もせずにただじっと彼の言動を聞いていた。
「そう…例えば、人質」
「…………」
「いかがかね?」
「…、あんたの洞察力が少し怖いな」
「光栄」
「褒めてはない」
冷たくそういって「あー」と前髪を掻き揚げながら唸る。
手のひらを額に当ててうつむくだったが、
盛大にため息をついて、ポツリポツリとつぶやくように言った。
「大切な人たちがいるんだ…。僕が帝国を裏切ればその人たちを誰が守る?」
「…。だから、君は帝国に従うのかい?」
「沢山考えたけど、そのほかにいい案が浮かばなかった」
「それは、君一人でだったからだろう?」
はちらりと一瞬だけ階段の方に視線をやった。
再度、エドガーに視線を戻す。
エドガーが優しく微笑む。
「心配はいらない。私達は無理やり君を帝国に突き出したりなんかしないよ。
まぁ、君が心の底から帝国に戻る事を望むというのならとめはしないが…」
は静かに目を伏せる。
エドガーがポケットに手を入れた。
「ではこれで決めるというのはどうかな…?」
「…コイン?」
「表が出れば私の勝ち。もう少しだけ私達に付き合って欲しい。勿論君に否定権はある。
…逆に裏が出れば君の勝ちだ。自分の思うようにしたらいい、私は止めない」
「…そっちが圧倒的に不利な条件だぞ?」
「なに、これはゲームだよ。それに…私達は帝国とはやり方が違うということを理解して欲しい」
はそれに頷く。
エドガーがピン、とコインを指ではじいた。
金色のコインが虚空に円を描く
あとがき
第7話up!!
長くなってしまったのでいったん切ります
後、三話くらいかかるかな…フィガロ編…