Angel's smile
アイツは…嫌だ――…
砂漠の城フィガロ 8
「ティナ、おいで」
暫く、地面のコインを見つめていたが唐突にその名を呼ぶ。
エドガーはまるで気付いていなかったかのように「おや?」と呟く。
壁を一枚挟んだ場所からしょんぼりとしたティナが罰の悪そうに顔を歪ませて出てきた。
「あの…聞くつもりじゃなくて…」
「…うん」
「………」
心配そうにいうティナには口角をあげて見せると、
くい、と親指でコインの方向を指した。
ティナの表情が見て取れるように明るくなった。
「決まったようだね」
「…っ、じゃあ!」
「…ま、なんか心配させたみたいで…」
その後は、
ごめんね…、ティナ。
と、こう続く。
ティナの部分をちょっとだけ強調させていた。
エドガーは肩をすくめると、私の城は如何だったかな?とティナに問う。
だが、彼女の耳には自分の言葉は聞こえてないようだった。
「良かった。本当に良かった!」
「…うん、そだね」
「…うん!」
がほんの少し目を細めた。
ティナはまるでを手放さないかのように両手を握り締める。
そしてはにかむ。
その光景をエドガーはとても暖かい…お兄さんの眼差しで見つめていた。
+
三人で、王座の間へと戻ると至極あわてた様子のフィガロ兵が
息を切らせながら駆け込んできた。
自然とエドガーの顔に笑みが消える。
「エドガー様!帝国のものが来ました」
「ケフカか!」
エドガーの目つきが変わった。
兵はエドガーの支持を受けると早々と王座の間を出て行く。
が「…来たか」とつぶやいた。
やれやれといった風にエドガーが肩をすくめる。
そして、おびえるように目を伏せるの頭にポン、と手を置いた。
「君たちはここに」
「ああ」「ええ」
そう一言だけいって、エドガーはマントを翻した。
は壁側へもたれかかるように座った。
隣を当たり前のようにティナが座る。
はネックレストップを握り締めながらそっと目を閉じた。
一枚壁のむこうから、エドガーと帝国の兵…
そして、どこか人を小ばかにしたような“アイツ”の声が響いてきた。
+
四角い部屋。
薄い暗闇。
小さな窓。
手首の冷たい感触。
それは私を縛り付けていたもの…
―鎖
『逆らう気ですか?』
『…』
『ほう…あなたもああなりたいと?』
気が可笑しくなりそうな高い声。
耳障り。
癇に障る。
だけど、感情を表に出す気力が私には無かった。
すべてが無。
それが楽だった。
それだけ…
『…ぃ、いえ………』
『いい子ですねェ…貴方ならそういってくれると思いましたよ。ヒッヒッヒ…』
…私はすべてを裏切った。
+
「大丈夫?」
隣にいたティナの声で遠い過去に向かっていた意識はこちらへと呼び戻される。
あんまり…かな?
といったに、より一層ティナは心配そうな表情をした。
はティナに手を伸ばす。
「なんか…。ティナに心配かけてばっかだな僕…」
「ううん、いいの。それよりも頼りにしてくれてる方が嬉しい」
「…へぇ。でもティナはすっごく頼もしいよ?」
時々めが離せないときもあったけどね。
と冗談めいた笑みで静かに笑う。
二人はこそこそと内緒話をするかのように小声で話していた。
背中から、エドガーたちの話し声が聞こえる。
『ま、せいぜいフィガロがつぶされない様に祈ってるんだな!』
捨てるように台詞を吐いて、それっきりケフカと帝国兵の声は聞こえなくなった。
は今まで強張らしていた身体の緊張を一気に解く。
扉が開いて、エドガー+ロックが中へと入ってきた。
「(…どこから沸いて来やがった…?)」
「声にでてるぜ?…」
「おっと」
ククッとのどを鳴らすように笑う。
完全にわざとだと知るとロックはあからさまに不機嫌そうにした。
「気にくわない奴等だな」
それだけいうとエドガーと言葉を交わした。
エドガーの口から「例の部屋へ」という言葉が漏れる。
「君たちとずっと話していたいが大臣達と今後の作戦を立てなくてはいけない…。
王様の辛いところさ。…失礼するよ」
余裕気に笑ってはいるが一大事なんだろうな…
と、は奥の部屋へむかうエドガーを見つめて思った。
「俺についてきな」
ロックはそういうと歩き始めた。
ティナとは一度お互いを見合い、それからロックの後へと続く。
何か変な心地だな
あとがき
第8話up!!
王座の間とケフカたちがいたところの間になんかの通路って無かったっけ???(おーい)
ヒロインは誰にでもついていきすぎなのでは?