Angel's smile
















沈む 沈む それは城――…















砂漠の城フィガロ 9















通されたのは個室。


二つのベットからするに、ここで休息をとるようにと案内したのだろう。


そんな事を頭の隅で考えながらは、歩くのをやめて振り返ったロックに視線をやった。




「窮屈な思いをさせてすまない。俺は……」


「ロックさんでしょ。エドガーさんから聞きました」


「…ドロボウなんだって?」




がからかうように言うとロックはすぐさまとレジャーハンターだと訂正を入れた。


どうだか…とがけらけら笑う。


ロックは一瞬何か言いたそうな表情をしたが、ぐっと飲み込み話と続けた。




エドガーは表向き帝国と同盟を結んでいるが


裏では反帝国組織リターナーと手を組みたがっている。




「(リターナーか…聞いた事があるな…)」




二人は相槌をうつ。




「俺はそのパイプ役としてとして動いている」




ロックはそういってから、ナルシェであった老人もリターナーの仲間だということも付け加えた。


一通りの話を隣で聞いていたティナが表情をゆがめる。




「帝国…私達は帝国の兵士…」


「…だった。帝国に操られていたウソの姿。でも今は違う」


「(…。ウソ、か)」


「よく……わからない。どうしていいか。頭が……痛いわ」




今のティナは、まるで出口の見えない迷路の中をさまよっている気分なのだろう。


戻る事ができず、ただただ進むだけ…


不安を感じるのは当たり前の事だとは思ったが、口に出す事はなかった。


どう切り出せば言いのかわからなかかったというのも一理あったのだ。




「これからは自分の意思を持てって事さ。今はあまり深く考えない事




 道はいずれ見えてくるから」




ロックは落ち着いた口調で言った。


その言葉で静まり返った雰囲気を見計らったように


ゆっくり休めよと付け加えて部屋を後にするロック。


ロックが部屋を出て行った刹那、ティナは呟くように「自分の意思…」と紡いだ。




がベットに横たわる。


ゆっくりと天井に息を吐くと今まで入りすぎていた力が抜けていくようだった。


うとうととした眠りの波がに押し寄せる。




「ごめん…先に寝るね」


「うん、今日は早かったものね…。おやすみ」


「おやすみ。ティナもはやく寝なよ」


「ええ」




目を瞑ったかと思うとものの数分で静かな寝息が聞こえてきた。


よっぽど疲れていたのね。




ティナは安心した表情で眠るに小さくありがとうと紡いで、


自分のベットに身を滑らせた。




の胸元にあるペンダントトップが淡く輝いた。


それはまるで二人を守るかのように…









 +









つん、としたにおいを鼻先に感じては慌てて飛び起きた。


できるだけ落ち着く事を努力しながら窓の外を見つめる。


一番に目に入ったのは赤――




「火か…。あの野郎…」




大方アイツが火を放ったのだろう。


本人じきじきとは限らないが、どっちにしろ指示を出したのはケフカだ。




ティナを起こそうと体の向きを変えようとした時、


コートの胸ポケットから綺麗に折りたたまれたものが落ちた。


はゆっくりとそれを拾って暫く見つめる。


そしてぎゅっと握り締めた。




「父さん、力…貸してね」




ぱっと開くとそれは帽子だった。


深い緑色をしたもので、中央に赤い十字の刺繍が施してある。


は自身の髪を入れ込むようにしてそれを被り、ティナを起こした。




「ティナ、起きて。…なんかヤバそうなんだ」


「ん…?、おはよう」


「うん、おはよう。寝起きで悪いけど説明は後で…早くあいつらと合流……


 ………………する必要はないか」




――ガチャ




―二人とも起きてるか!?


…な?


…そうね



いくらか落ち着きのない様子で部屋に飛び込んできたのは他でもないロック。


お前らなんでそんなに落ち着いてるんだ…?というロックの疑問を


適当にが答える。




、これ。エドガーが被ってろってさ」


「…そうか」





短く返して、受け取ったマントを身にまとった。




「いくか…」




ロックの言葉に二人は頷くと、早々と部屋の奥にある階段を昇った。









 +









「ここを…飛び降りるのか?」




の静かな問に、ロックは何事も無かったように「エドガーの合図があればな」と答えた。


ごくりとつばを飲み込む


少し強めの風が吹いて、の被っているマントが揺れた。




「そろそろかな…」




ロックがそういって、下を覗きこむ。


暫くして彼の言ったとおり三匹のチョコボが城の後方からまわってくる。


その一匹に乗っていたエドガーが、のれ!と、合図を出した。




はティナと…!」


「わかってるっ!」




いくよ、と一言おいてはティナの手を握りしめて飛び降りた。


先にチョコボに乗ったは手綱を握ってうまく操作して、


ティナを自身の前へと導いた。


その時ティナの短い悲鳴と、チョコボのクエッという小さな小さな悲鳴が聞こえたような気がした。


…気のせいだ、気のせい…


は後者のそれを聞こえなかったことにして、ロックとエドガーに続いた。




「いいぞ!沈めろ!」




エドガーの声を合図にあの大きな城全体が音を立てて沈み始めた。


それをみてロックが楽しげに声を上げる。


フィガロの城の頭の部分が砂の中に埋もれた頃、


逃げそびれた帝国兵とケフカが砂漠のど真ん中に放り出されていた。




「へぇ、やるじゃん」


「すごい…」




ティナとが同時に感想を漏らす。


道を示すように前を走っていたエドガーがちらりと後ろを振り返る。


その視線に気付いたティナがさらに後ろを振り返り、「あ」と言葉を紡いだ。




「…。そう簡単には見逃してくれないか」


「そうね…」




三匹のチョコボの後ろをものすごいはやさで魔導アーマー二体が追いかけてきた。


その後ろではケフカが「いけ!殺せ!!」と指示を出している。


が小さく舌を打つ。




時期に追いつかれる事を悟ったエドガーは手綱を緩め迎え撃つ。


とロックもそれに従った。


ティナはのケフカを気にする視線を感じ取って、


チョコボを降りてからやんわりと微笑む。




はここにいて…?」


「…けどっ」


「こっちは任せろ!」


「ちょっとは私達の力を信用して欲しいな」


「…」




すでに戦闘体勢に入っているロックとエドガーがニヒルな笑みを浮かべて言った。


それにティナも加わる。









はそっとマントに手を掛けた。














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あとがき

第9話まできましたねぇ…(いやぁ、早い)
次で終わらせようとしたらこんなに長くなっちゃいましたorz
ヒロインイラストのほうでちゃらちゃらと書いている帽子はここから着用です
…説明が短すぎたかなぁ…

設定を追加、ヒロインは人をからかうのが好き
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